アンケート小説
□可愛い子犬の大きなお家
2ページ/7ページ
そうして現在――跡部の広すぎる玄関の前でその家の住人である景吾が自ら桜乃を出迎えている、という訳だ。
因みに、跡部が客を出迎える行為事態も非常に非常に稀である。
「あっ、跡部くんのお家って広いのね・・・最初はお家って分からなかったよ。」
そう目を丸くしながら豪華な内装に彩られたロココ調の玄関にみいる桜乃に跡部は何でもないことのように返した。
「そう・・・ですか?俺は普通サイズだと思ってるんですが――それよりも玄関では何ですから、居間へどうぞ。今召し物を――ミカエル!」
そうパチンと指を鳴らして声を掛ければ颯爽と老執事のミカエルが歩みより桜乃の帽子をさっと受け取るとそのまま何処かへ歩いていってしまった。
「えっ?あの・・・跡部くん?」
そう事態が飲み込めずにされるがままの桜乃が狼狽すれば跡部はにっこり笑って桜乃の側に歩みよった。
「心配しなくても大丈夫です。先輩の大切な帽子は安全な場所で保管しておきますから。」
そう当然のように言われ、なぜ執事の人やメイドさんがこんなに沢山いるの、とか帽子一つでそんな保管なんてとかを桜乃が口にすることはできず、気付けばその手は跡部の手の中。
「それでは、参りましょうか?桜乃先輩。」
そう嬉しそうに手を引かれれば桜乃は夕方の帰り道と同じくされるがままになるしかなかったのだった。
――(大失敗だ。)
そう跡部は広いリビングで一人唸り声を上げていた。
日が斜陽に傾きかける午後3時――跡部の計画では本来ならば今自分と桜乃はリビングで午後のティータイムに洒落こんでいるはずだったのだが、今目の前では・・・
「可愛らしいでしょう?」
「はい!!とっても!」
そう楽しそうに笑う桜乃と跡部家で長年ハウスキーパーとして働いているウリエルのやりとりが繰り広げられている真っ最中。
しかもその内容はと言えば・・・
「これが景吾様が3才、こちらが景吾様が5才の頃の写真ですわ。」
「うわぁ!こっちも可愛いですね!お人形さんみたいです!」
と言う自分の子供時代が暴露されるという何とも屈辱的なものだったのだ。