小説

□幸福時間
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12月4日。

今日は、彼にとってはとても大事な日。

私にとっても大事な日にしたいから、精一杯のお祝いをしたいの。

でも──彼は何をあげたら喜んでくれるんだろう?



──「桜乃が食べたい。」

『ブハッ!!!』

冬も近くなり、段々と肌寒くなってきた季節。

外では例年通り、少し強めの木枯らしが吹き、学校の気の枯れた落ち葉を吹き飛ばしている。

そんな午後――立海テニス部のメンバーは、あまりに強くなってきた木枯らしに外での練習を諦め、区切りもいいからと休憩も含めて部室で軽いお茶を取っていた。

その最中、脇の方で彼にしては非常に珍しくボーっと考え事をしていたコート上のペテン師仁王雅治は、穏やかな輪にポツリと爆弾発言を投下したのだ。

それにメンバー中、丸井、ジャッカル、切原、真田の4人が飲んでいたお茶を盛大に吹き出し、幸村、柳、柳生の3人は吹き出しこそしなかったものの、持っていたカップを握りしめ、数秒程固まってしまった。

そうして全員してその爆弾発言を投下した仁王を見やる。

いつもの彼なら慌てる周りにニヤリといやらしく笑って見せ、「何慌てちょる?冗談じゃき」と言いそうなものだが──


『ボーーッ』


そんな効果音がつきそうな位に仁王の意識は遥か彼方に旅立っていた。
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