小説

□ペテン師には御用心
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あの人は不思議な人。
気がついたら側にいて気がついたらいなくなっている。
まるでフワフワしている風船のような人。
だけど、本当は優しくて面倒見が良いこともちゃんと知ってるから。
そんな貴方が大好きです。
でも──いくら何でもこれは無理ですよ〜!!


──「にっ、仁王さん?」

モノクロな家具で統一されたシンプルな部屋。
ゴテゴテした物など何もない、もっと言ってしまえば生活感さえ見えないその空間で、少女竜崎桜乃は緊張した面持ちで前にいる青年に話しかけた。

「んっ?なんじゃ、桜乃。」

一方、問われた青年の方は飄々としながら、笑って桜乃を見て答えた。

実は今、桜乃が冷や汗を流している理由こそ、この目の前の相手にあるのだ。

桜乃はどぎまぎしながら、上目遣いで相手を見て続きを口にした。

「あの……どうしてもしなきゃダメですか?」

「ダメじゃな。」

銀髪の青年はニタリと笑いながら、桜乃の問いかけを無情にもバッサリ切り捨てた。

「お前さんは、人とした約束を簡単に破るんか?お前さんにとって約束ってのはそんなに軽いもんなんかの〜?」

だとしたら、俺はショックぜよ……と涙を拭う動作をする青年。

その様子に更に桜乃がウゥッと黙り、「そんなことは……」と否定の言葉を口にすると、彼、仁王雅治は口端を上げて微笑んだ。
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