小説

□愛しのMy Princess
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俺様の彼女は、ドジで鈍臭くておまけに地味。
だが、世界一可愛い……俺様だけのprincess(姫)。


──「あのっ……跡部さんっ?」

桜乃は、フカフカの白いソファーの上で、目を白黒させて目の前の青年を見つめている。

「あ〜ん?何だってんだよ?桜乃。」

一方、跡部と呼ばれた青年は何とも楽しそうに口端を上げながら、彼独特の口癖とともにそう返事を返してきた。

彼は跡部景吾。

氷帝学園、通称氷帝の生徒会長かつ、唯一無二のテニス部部長である。
運動神経抜群、成績優秀。何よりも人を惹きつけるカリスマ性と統率力は、他の追随を許さない程高い。
まさに、帝王と呼ばれるに相応しい人物。

そんな彼が今、どういう状況におり、対する桜乃が今、どんな格好かというと……

「ちっ、近いですよ〜!」

「バカか、お前?ワザと近づけてるに決まってんだろうが!」

正にこの通りな状況な訳で。

桜乃は白いソファーの端に身をすくめ、対する跡部はそんな桜乃の両端に手をついて逃げ道を塞ぐと、桜乃に顔を近づけて眺めている。

「あっ、あの〜……もっ、もう少し待って頂けないでしょうか?」

跡部の顔のアップにすら余裕のない桜乃は、顔を赤くしたままそう言う。
そんな桜乃に跡部はこめかみをひきつらせて答えた。

「お前……そんな事言い続けて何分経ったと思ってるんだ?」

そう。豪華な内装品に彩られた、まるで昔の王宮貴族を彷彿とさせる跡部の部屋で、こんなやり取りが繰り返されてもう早15分は経っているのだ。

跡部にしてみれば大いに待っているつもりだ。

「でっ、でも、やっぱりまだ恥ずかしいですよ〜っ!」

しかし、この鈍感少女には刺激が強すぎるようで、顔を赤く染めて涙を流している。
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