小説

□不思議なあの子
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「ふぁあ〜っ……眠っ。」

夕暮れ間近の空の下。
1人の少年は、そう大きな欠伸を一つした。

少年は、キャップの帽子を目深に被り、三白眼とも言える鋭い目つきを眠気の為、更に細めながら歩いている。
羽織っているのは青いジャージ。彼の通う青春学園のテニス部のレギュラーしか着ることの許されないそれを彼は当然のように着用している。

そして、彼の左手にはテニスラケット、右手にはテニスボールがしっかりと握られていた。

少年の名前は越前リョーマ。

青春学園、通称青学のテニス部であり、何と一年にしてレギュラー入りを成し遂げた期待の新人ルーキーである。

まぁ、本人は他人の評価にあまり頓着しない質ゆえに、そう呼ばれる事に大した関心をよせてもいないが。

しかし、彼のテニスに対する執着、主に強くなるという行為に関しての彼の関心は他の追随を許さない程に強く、また彼自身も無類のテニス大好き人間なのだ。

そんな彼が、授業中ならいざ知らず、テニスの練習中に大きな欠伸をするのには訳があった。

(テニスの試合……遅くにやりすぎ。しかも、そんな日に限ってビデオデッキは壊れてるし。)

そう、昨日はちょうど、彼の見たいテニスの試合が夜中に放送される日だったのだ。
いつもはビデオですませるなりしているのだが、昨日は最悪とリョーマの愛猫カルピンがデッキの上に乗り壊してしまっていた。
よって、リョーマは当然のように夜更かし。
しかも、物事は来て欲しくない時、特に自業自得の時に限ってやってくるもので、リョーマの嫌いな国語が時間割り変更により放課後二限と立て続けに行われたのだ。
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