アンケート小説

□可愛い子犬の大きなお家
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――「桜乃先輩、いらっしゃいませ。」

「はっ、はい。おじゃまします。」

それは青天の霹靂――今日、日本屈指を誇る大財閥、跡部の豪華な邸宅に一人の平凡な少女が招待された。
彼女は跡部家の次期後継者である孫の景吾によって招かれた可愛い来訪者。

その出来事は跡部がこの世に生を受けてから今まで生きてきた中で初めてのことで、跡部家の執事、メイド、屋敷の使用人一同は天地を揺るがす衝撃を受けた。

そう本当に驚いたのだ。

それは遡ること約2日前の出来事。



――「えっ?看病のお礼?」

それは夕暮れなずむ帰り道。

突然切り出した自分に、三年先輩である桜乃がそう目を丸くしながら答えてきた。

あの風邪の件から約1週間、すっかり桜乃の優しさと芯の強さに惚れてしまった跡部は徒歩でのお見送りを通例にさせてしまい、今日も今日とて二人きりの帰り道を半ば無理矢理決行していた。

そしてその道中、跡部は今まで黙っていた、もといタイミングを伺っていた件を口にしたのだ。


そう――


「桜乃先輩、俺の家に来ませんか?」

という招待の誘いを。

跡部は基本、欲しいものは何でも手に入れたくなる質である。
そして跡部は桜乃に彼女として側にいて欲しい。

だから、この先輩と後輩の上下関係は非常に邪魔くさいことこの上ないのだ。

何せ桜乃は自分を可愛い後輩、もしくは弟くらいにしか思っていないのだから。

だからその関係を崩すためにも招待した――これは風邪を口実にしたデートなのだ。家にしたのは桜乃の警戒心を削ぐためである。

一年生のくせに全く可愛くない思考回路だが、それだけ跡部が本気な証拠。

あまりに急なことに桜乃が戸惑うことも折り込み済みだった跡部は、更に、風邪で看病してくれたお礼だ、とか、カブリエルが是非お礼をしたいと言ってきかないだとか色々な理由をあげ列ね、人の良い桜乃に無理矢理了承させたのだ。
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