お題&パラレル
□狼まであと何秒?
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お前は知っているか?
俺がどれだけお前のことが好きで、そして、どれだけお前に触れたいと思っているかを。
焦がれて、焦がれて──
出てくる感情はまるで、拙い子供の我が儘のよう。
あぁ、俺はお前に溺れてる。
認めてやるよ、だから……
お前も俺に溺れろ
──「跡部……さんっ」
薄暗い室内。
鼻腔を擽るバラの甘い香りの中で、少女はそう、か細い声を上げた。
いつもは纏められている三つ編みは、今は解かれてベッドに緩いウェーブとなって広がっている。
そして、そのベッドの真上では、彼女の細いしなやかな両手がまとめられ、ネクタイで縫いつけられていた。
「あ〜ん?何か言いたいことでもあるのか……?桜乃」
一方、そう彼女の声に答える男は平然とした声音で聞き返す。
彼こそが桜乃の両手を縛った男──そして、桜乃が困惑の眼差しを向けている相手でもある男。
男の名は跡部景吾。
氷帝学園の生徒会長であり、テニス部部長でもある彼は、眉目秀麗、文武両道のまさにカリスマ中学生。
そんな彼は今、桜乃の体を自分のベッドに押し倒し、彼女を見下ろす姿勢になっている真っ最中だ。
「い、言いたい事といいますか、あの……どうしてっ、私はこんな格好を?」
一方、ほぼ馬乗りに近い状態で跡部に見つめられている桜乃は頬を染め、冷や汗を流しながら頭に大きなはてなマークを浮かべている。