novel・2

□月の下
1ページ/3ページ





全国大会を準優勝と記録を納めた夜、幸村の母親から電話がきた



「はい、お電話かわりました。今晩は。」



『今晩は…真田くん?そっちに精市居ますか?』



「??いいえ、大会終わってからは皆家に帰ったと……」



『そう………実はまだ精市帰ってなくて…』



「………幸村が?」



『もし、よければ………こんな夜遅いのに中学生を外に出すのは申し訳ないんだけど…精市を捜すの…手伝ってはくれないかしら……?』



「えぇ、大丈夫です。それでは、俺は学校方面を捜してみます。」


『……ありがとう真田くん…』




電話を終えてすぐ

家を飛び出す。




幸村は一人悔やんでいるのか…と、きっと一人責めているのだ…




走って30分、学校に入り
部室付近にたどり着く。



「…………幸村。」



一人身体を小さくして泣いている幸村。


呼んでも顔をあげてはくれない。



「幸村…皆心配しておった。帰るぞ。」



「嫌…帰りたくない。」




「だだこねるな。ほら」



「嫌だ…今顔が酷いから…」



「なら、少し距離を置いて歩く。」


「いぃ…もうほっといてほしい…」



「ほっとけるわけないだろう。」



「……そこは放っておけよ…」



「幸村、今日は残念だった。だけどお前だけ負けた訳じゃない…皆同じ気持ちだ。泣きたいなら、胸をかす。」



「泣いてないし。」



「説得力がないぞ、幸村。涙の痕がついている。」



「あくびしたら流れたのー」



「こんな大量にか?」



「………人の揚げ足ばっかとるなよ」



「無理に嘘をつこうとしているお前が悪い。」




いつもよりしつこい言い訳。


きっと、俺が帰った後も泣くのだろう。




「…………ごめん、お願いだから…一人で、居させてっ………」



「ゆ、きむら……!?」



さっきまで余裕ぶっていた幸村の顔は一気に歪み、大量に涙が瞳から溢れていた。

さすがに急だったので驚いた。





「全国、大会……優勝出来なくてごめん…俺は弱い…」



「何を言う、幸村。幸村は強い…だから立海大の部長なんだ。」



「………真田も見ただろう?あんな、負け方…越前くんの前ではあんな事言ったけど、本当は全部嘘。自分が……許せないよ。」



「幸村…」



「ごめん、真田…最後の試合があんな結果で………」



「それは幸村一人だけの責任ではない。それに皆、頑張っていた。勿論幸村だって、あんな球誰も返せないだろう。」



「さな、だ…………





ありがと、真田っ………」



「う、うむ。」



下から上目遣いでお礼を言った幸村。


きらきら光って綺麗な瞳だった。







.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ