僕だけの暗号U

□えぬえす
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「えっ、‥‥なんで‥っ?」



今日も無事に仕事が終わって家に帰った。
仕事が忙しいのはありがたいし、色んなこと吸収できるから楽しいし。
でもやっぱり体の疲れを感じずにはいられないわけで。



これはもうベッド直行だわ。
風呂なんて明日でいい。



そんなこと考えて、鍵を捻って家に入ると、見覚えのある靴。
それを見た瞬間、胸の鼓動が早くなって、騒がしく靴を脱いでリビングに行けば、ソファで雑誌読んでくつろいでる渉がいた。


そこで出たのが冒頭の台詞。


俺の声に気付いた渉がこっちを振り向く。



「あ、おかえりー。」


「なんで?どうしたの、急に。」


突然のことに早口でまくしたてると、渉の八重歯が光った。



「恋人が家にいたらダメなの?」


「や、そうじゃなくて‥‥、」



意地悪な質問にもごもご答えられないでいたら、いつのまにか俺の前に立っていて、頭をふわふわと撫でられた。


びっくりするぐらい安心する手の平。


ゆっくりと顔を上げれば優しく微笑む渉と目が合った。



「お疲れさま。」



あぁもぅ、この一言だけで俺の疲れを取り去ってしまうこの人は一体何者なんだろう。


渉の腰に腕回して縋るように抱きつく。



「ごめん、ちょっと甘えさして。」


「そのために俺は来たんです。」



「‥‥‥まじで渉大好き。」




心から思ったことを零すと、小さく笑った声が聞こえてきた。

その笑い声に体温が上がるのがわかるから、また恥ずかしくなる。




「‥ねぇ、」


ゆっくりと離れて渉を見つめる。


「どうして来てくれたの?なんも言ってなかったのに。」



こんな女々しいこと言ってる自分に驚いて、照れ隠しで目を伏せて笑いながらそう問えば、また抱き込められて耳元で囁かれる。



「俺も会いたかったから太輔もそうだろうと思って。」



でしょ?ってまた笑う。





強い。ほんとに強いよ、渉さん。
だってその通りなんだもん。


だから肯定の返事をすれば



「‥‥可愛い。」



くす、と笑って触れるだけのキスを落とされた。





今日は眠るときも渉がいてくれるし、明日は起きたときも渉がいてくれる。





うん、明日は確実に頑張れる。





「俺明日頑張れるわ。」


「‥‥っえ、俺も今渉とまったくおんなじこと考えてた!」


「さすがですね。」







もぅ渉なしじゃ無理そうです俺。








end
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