僕だけの暗号U
□やっぱりダメですか?
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うわぁー、今日めちゃめちゃ天気いいじゃん。
どっか買い物でも行こっかな。
朝起きてそんなこと考えてたら、手元で携帯が震えた。
それは千賀からの着信で。
おっきめのため息を吐いて電話に出れば、予想通りの言葉。
『今から家行ってもいい?』
それを聞いて、また一つ小さくため息をこぼす。
電話した時点で、俺の家に来る準備をしてるのは知ってる。
例え断ったとしてもねだられることも。
『いーよ。おいで。』
結局いつもそう返すしかない。
だから今も俺の目の前にいるわけです。
俺んちで見るためにわざわざ借りてきたバラエティー番組のDVDを、テレビのまん前で見てる。
その後ろ姿をソファに座って見てる俺。
テレビが賑やかになると、千賀の体も揺れる。
おもしろいんだろうなぁって思うと、なんとなく嬉しい気持ちになる。
別に俺が笑わせてるわけじゃないのに。
ん、テレビが静かになった。
終わったのかな?
「いやぁー、笑えるね。実に。」
DVDを片付けながら呟く、ていうか、吐き出す?
無理して難しい言い回しして。
たまに使い方間違ってるときあるんだよね。
でもそこが可愛いとこなんだよ。
うぁーっ、てなんかおっさんみたいな声出して大の字に寝そべるから、暇になった隙をついて、朝考えてたことを提案してみる。
「ねぇねぇ、買い物行こうよ。天気いいし、外出たい。」
ソファに横たわって、千賀の顔を窺う。
そしたらこっち向いて、少し見つめあったらむっくり立ち上がった。
こっちに向かってきたから俺も起き上がる。
と、その瞬間に俺の上に向かい合わせに座られた。
「買い物行こうよ。」
少し高い位置にいる千賀に言うと、肩掴まれて軽いキスされた。
「今日はゆっくりしたい。」
「えー。だったらにかと家でゆっくりしてればよかったじゃん。」
俺の上から降ろしながら言う。
そうだよ。わざわざ俺んとこ来なくても、にかと一緒にいればいいのに。
恋人なんだから。
すると垂れていた俺の手を、野球ボール扱うみたいにぽんぽんする千賀。
「だってたまといたかったんだもん。」
「ずるいよー、そんな台詞。」
「ほんとのこと言ったまで。」
生意気なこと言ったから、あご掴んで食べるみたいに唇に噛り付いてやった。
「ふ、んんっ、‥ふぁ」
色っぽい声出しやがって。
俺のもんじゃないなんて、悔しすぎるよ。
「‥‥っは、‥‥大胆すね。」
離れると、笑いながら千賀が言った。
「しょうがないから今日は家で大人しくしといてあげるよ。」
そしたら俺の腕を抱いて寄っかかってきて、ちっちゃい声で呟いた。
「たまのそういうとこ大好き。」
あーぁ、ほんと、そういうこと言われると、どんどんハマってっちゃうよ。
千賀にはにかって恋人がいる。
そんなのわかってる。
こんな関係ダメだってことも。
でも、千賀が俺の存在を求めてくれるなら、俺はそれに答えるし、2番目でも構わない。
俺に寄っかかってる千賀の頭に、俺も頭を傾ける。
「ありがと。」
こんな空間がずっと続けばいいなんて、望んじゃいけないことなのかな。
end
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