僕だけの暗号U

□糖分120%
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「早く早くっ、手越っ。」


「はいはい、ちょっと待って。」


二人でご飯を食べに行って、帰ってきて、思ったより寒い外の気温から逃げたくて家のドアの前まで走った。
あとから小走りで来る手越に、鍵を開けてっておねだり。


手越がぽっけから出した鍵でがちゃん、とドアを開けてもらって、先に入れてもらう。


「ただいまぁ〜。はぁー、寒すぎるよ外ぉ。」



リビングまで走ってヒーターのボタンを押す。

ヒーターの火がつくまでの時間のもどかしいことと言ったら。
もっと早くつくようになんないかな。



「まっすー、手洗いうがい。」


ヒーターの前で体育座りで手をかざして待ってると、やっと中に入ってきた手越からのお声。


「はぁーい。」



洗面所に行って手をごしごし。

手をごしごし。

手、ごしごし。



「ふふ、てごし。」


「え、なに?」

「ぇ、あ、なんでもない。」



声に出しちゃってたみたいだね、俺。



「ねぇねぇまっすー。」


「んー?」


手の泡を水で流して。
もぅ、水冷たいよ。
手が凍っちゃう。
でも、お湯にするのも負けた気がしてできないんだよね。

俺って変わってんのかな。



「さっきなんで自分で開けなかったの?合鍵持ってんのに。」


「え、だって‥‥ぽっけから手出したくなかったんだもん。」




うそ。

ほんとは手越に開けてもらいたかっただけ。
手越と一緒に家に入るときは、なんとなく手越に開けてほしいんだよね。


そんな俺の思いは内緒なの。



「ふーん。まっすーはほんと寒いの苦手だね。」


「嫌いじゃないんだけどねー。」


手の水気をタオルで拭き取って、最後にうがい。

パチ、と電気を消すと先に手越がリビングに向かってったから、その背中にへばりつく。


歩きづらいけどあったかい。




リビングに戻れば、さっきヒーターを着けといたおかげで部屋があったかい。


おもむろに手越が俺から離れてキッチンへ向かった。


さぁーて、俺は着替えよっと。

















着替えて戻ってくると、ローテーブルの俺の場所に一つのマグカップが。


近づいてみるとぷぅーんと甘いにおい。



「ココアだぁ。ありがと手越ぃ。」


「ふふん。」



ソファに座ってる手越に言うと、優しいほほ笑みを返された。

せっかく俺の場所に置いてくれたけど。



「よいしょ。」



今はここに座りたい気分。

手越の隣に座ると、距離を縮めてくれた。



あったかいココアをちびちび飲んでると、急に頭を撫でる感触が。


ココアを飲むのをやめて手越の方を見やると、ん?と首を傾げられた。



「どうぞどうぞ、ココア飲んで。」


「ぇ、うん‥。」


「あ、俺着替えてくるわ。」


「ほーい。」




リビングに一人になった俺。

早く戻ってこないかな。
なんかちょっと、寂しいんだけど。



ふーふー冷ましまくって飲みやすくなったココアをごくごく飲み干して、手越がいる寝室へ。



寝室に行くと、手越が寝るとき用のTシャツに頭を通したとこだった。

相変わらず華奢だな。



そんなことを思いながらぼーっと見つめてると、不意に目が合った。




「もぅココア飲んだの?」


「‥ぁ、うん、おいしかった。ごちそうさま。」


「いーえ。」




やっぱり手越って男前だ。

俺が寒い寒い言ってたからきっとココアを作ってくれたんだろうし、それを当然のようにやってくれる。


もてないわけがないよな。



「よし、寝よっか。」


「ん?うん。」



別に寝ようと思って来たわけじゃなかったけど、別にいいや。

だってベッドに入った方があったかいもんね。


早速ベッドに潜り込もうと思ったら手越が戸締まりに行ったから、中には入らず座って待つ。


一人でベッドに入るのはあんまり好きじゃない。
今は特に入りたくない気分。




「あれ、先ベッド入っててよかったのに。」


戸締まりから戻ってきた手越に言われた。



「うん‥でも、なんとなく待ってた。」


「ふふ、ありがと。」


手越が部屋の電気を消すと、カーテンから漏れる外からの明かりだけになった。

この暗さ好きなんだよね。


先にベッドに手越が入ったから、俺もその後に続いてもぞもぞ。


「はぁ‥、あったかい。」


体の力を抜いてベッドに沈み込むと、もぅ極楽だね。
ほんとに幸せ。



少し手越の方に擦り寄る。

人のぬくもりほど、あったかくて安心できるものはないと思う。



すると、隣の手越がもぞもぞ動いてこっちを向いた。




「今日のまっすーは甘えんぼさんだね。」



急な一言に、一瞬大きく心臓が跳ねた。
その後もドキドキ、心臓の音がうるさい。



「くっついてきたり、寝室まで追い掛けてきたりして。」


くりくりの大きい目でじっと見つめられて、髪の毛を梳かすようにふわふわと頭を撫でられる。



あぁ、なんかもぅすべてを見透かされてたのかと思うと、相当恥ずかしい。
顔がすごく熱くなってきた。




「今日は甘えたい気分だったの?」



「‥‥‥うん、そうみたい。」



「いつものつんでれも可愛いけど、甘えてくるまっすー、相当可愛い。」



そのままお腹に腕が回されて抱き寄せられる。
ちゅーする距離まで顔が近づいてきて、心臓がもぅ限界。


お互いの鼻がぶつかって、我慢できなくて自分から手越の唇に吸い付いた。


そしたら、背中に回ってた手越の手が後頭部に回って、ぎゅっと抱き込められた。





「‥‥っは、手越‥?」


「なぁに?」





唇から離れて、照れ隠しで俯く。



普段は恥ずかしくて面と向かって言えないけど、今なら言える‥‥ていうか、言いたい。




でもやっぱり、見つめ合って、なんてできないから、頭を持ち上げて、手越の耳元に顔を近付けて一言。





「世界で一番大好き。」






くすくすって、手越の嬉しそうな声が聞こえてきて、俺もじわじわ嬉しくなる。



言わないだけで、毎日毎日思ってるんだからね?

だからずっとずっと、そばにいてよね。










end
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