僕だけの暗号U

□38℃以上
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「にかぁ‥ごめ、ね‥?」


「いいからしゃべんないで。余計なこと考えなくていいから。」


「‥うん。」





はぁ‥。

千賀が38℃越えの熱を出した。
話によると、2日前から熱が出てずっと寝込んでるらしい。


ぜーぜー言って目もうるうるして虚ろだし、顔もまっ赤でほんとに辛そう。

代われるなら代わってやりたい。ってよく聞く言葉だけど、今はまさにそんな心境。



ったく、ほんとにこいつには焦らされる。
今日はなんとなくびっくりさせたいと思って、アポなしで千賀んちに行ったらこんな状況。
逆に俺がびっくりしたわ。



千賀に目を向けると、ほっぺとか首筋に汗が垂れてる。
確か熱の時はいっぱい汗かいた方がいいってわったーが言ってた気がする。


うん、このままいけば順調に熱が下がってってくれるはず。



「ん、んん‥ぅ‥」


「ん?どうした?」


ベッドの横で膝ついてぼんやりと千賀のことを見つめていたら、体を捩って唸りだした。


「ぁ、あつぃ‥にかぁ‥」


「っ!!?」



赤い顔に潤んだ目。
熱に浮かされてるそんな表情でそんなこと言われて心臓が大きく高鳴った。

納まらない心臓の音がどきどきうるさい。

もともと綺麗な顔立ちをしてる千賀だから、こんな表情だと普段よりさらに色っぽい。




‥て、だめだめ。
病人病人。



「少し布団退かそっか。」


「うん。」


もふもふとした掛け布団やら毛布やらを退かして、少し厚めのタオルケットをかけてあげると、少し微笑んだ。



「ぁりがと。」


「汗いっぱいかいてるもんな。ポカリ飲む?」


「ぁ、うん、飲みたい。」


体を起こしてあげてから、ストローがささったペットボトルを口元に持ってくと、口を差し出してちゅーちゅー飲みだした。


「めっちゃごくごく言ってる。」

笑いながらそう言ったらぷはぁ、と一息ついて


「俺相当喉渇いてたみたい。」

って笑った。
現状で千賀の笑顔ほどほっとするものはない。

横になった千賀にタオルケットを掛けながらつられて俺も微笑むと、中から手が伸びてきて俺の手に絡まった。


「にかが笑うと熱上がっちゃう。」


あぁー、もぅ。
どうしてこう可愛いことが言えるのかな。

俺まで熱出ちゃうよ。



ぎゅ、っと手を握り返して頭をなでなで。




「早く風邪治して、そしたらいっぱい遊ぼうな?遊べなかった分、楽しませてもらわねーと。」


な、って笑いかけると柔らかく微笑んで頷いた。



「にかが飽きても遊んでもらうからね。」


「覚悟しとくわ。」



二人で笑い合うと、お互いに手を握り直した。



「頑張って早く治すから、治るまでそばにいて?」


「そんなの言われなくたってそうするつもり。てか、治ってもずっとそばにいるから。」


微笑んだ千賀の唇にちゅ、と軽いキスをして離れたら、空いていた千賀の片手が首に回ってきた。




「っ、千賀?」


「にか、ありがと。」


鼻がぶつかる距離でそう言うと、優しく唇が重ねられた。

名残惜しげに離れると、


「もぅ熱下がるまで我慢する。」

さっきより少し顔が赤くなった千賀がそう言った。

重なった千賀の唇は予想以上にあったかかった。






千賀がいないと俺が過ごす時間はつまんなくて。
白黒の世界って感じ。
だからお前がいるだけで俺の世界は鮮やかに色付くんだ。


お前の存在が俺が存在する理由。
お前の中で俺もそうであってほしいな。








end
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