僕だけの暗号U

□喜ぶ顔が見たいんだ
1ページ/2ページ








あとちょっとで日付が変わる。


‥あぁ、ほんとにこれ喜んでくれるかな。

やっぱ違うものを‥



『大丈夫!宮田は絶対喜ぶって!』



俺が自分で言ってみたものだったけど、メンバーは口を揃えてそう言ってくれた。




なんか、不安になってきた‥。





「ゆうたくぅーん、今帰ったよぉーん♪」


遠くで聞こえる宮っちの声。




こんっな遅くまで帰ってこなかったのは、みつとわったーに連れてかれてたから。


『タイミングよく家に帰すから、たまは宮っちんちで待ってろ!
その方が喜び倍増だぜ?』


にひ、と八重歯を光らせてそう言ってくれたわったー。



俺のために協力してくれるメンバー。

いい仲間ですほんと。




「もー、ゆうたくんが家で待ってるなんて言うから、俺思わず帰り道スキップしちゃったよぉー。」



靴を脱いだ音がした後に、廊下をすたすた歩いてくる音がする。


宮っちが近づいてきてる。


それを考えるだけで俺の心臓はいっぱいいっぱいになって、はれつしちゃいそう。



だから訳わかんない宮っちの帰り道の話なんか入ってこない。

てゆーか無視。





あぁ。


どんな顔したらいーんだろ。
やば、汗かいてきた。

うぅ、心臓、出ちゃう‥。




時間は?

よし、ばっちり。





ここで座って待ってれば‥




「たっだいまぁー!お待たせっ、ゆうたくん!‥‥‥っ?」




どきんっ


一瞬心臓が跳ね上がって、その後も鼓動がどきどきどきどき速いのがわかる。



ばっちり合ってしまった俺を見下ろす宮っちとの視線。





「ゆ、ゆうた、く‥」



「ぁ、あの‥えと宮「なんって可愛いんだ君はぁっ!」


「ぅおっ、」





なんか急に恥ずかしくなって、俯いてもごもごしてたら宮っちががばって抱きついてきた。



うぇ、骨折れそ‥



「なになにこの頭のてっぺんのリボンっ!ちょーぉ萌えきゅんなんですがぁっ!!しかもさ、なんでさ、正座してたのっ?あぁーもぅなんでもいいや!ゆうたくん可愛すぎぃーっ!!」




俺を恥ずかしくさせる言葉を、ぺらぺら早口で叫んだ宮っち。

別に正座なんて可愛いことないでしょ‥。



あぁーもぅっ、あっついなぁ。
宮っちのせいで体ごとあついよ。




宮っちはまだなんか一人でしゃべってる。


てか気付いてない?まさか。



「ちょ、ちょっと宮っちっ。」



宮っちの腕を掴むときょとんとした顔で俺を見つめる。



「ねぇ、気付いてないの?」


「なにが?」




‥やっぱり。



この男は人の誕生日ばっかり覚えて自分の誕生日忘れちゃうんだから‥。



ソファに置いてあった俺の携帯を開いて画面を見せる。



「日付け。」




9月14日だとわからせるように促すと、少し間が空いてからはっと目を見開いて手を口にあてる宮っち。



まじなの?この人。
忘れ方ひどくない?




「俺23歳‥?」


「そう。ねぇ、わかった?俺のこのリボンの意味。」



ん?と首を傾げる宮っち。

少し考える素振りをしてから、きらっきらした目をこっちに向けてきた。




うん、そう。その通りだよ。



「ゆうたくん!まさか『プレゼントは‥お、れ♪』的なあれ!?」



だからそうだってばっ。



あぁーもぅ、超恥ずかしいよ。




‥でも、

『おまけにさ、頭にリボン巻いて、誕生日プレゼントは‥お、れ♪的なやつやっちゃいなよ!』

って提案してきたみつの意見を採用したのは俺なんだよね。


『絶対喜ぶよ宮っち!』

この言葉に負けてね。





さぁーて。




「これは、ほんのおまけ。」



「これがおまけっ?」



「そう。」



「てことは、まだ何かあるんですか?」






あんま期待しないでよ?



そう言うと、へにゃんと笑う宮っち。


「ゆうたくんがくれるんだったらなんでも嬉しい。」



だって。






「はい、プレゼント。‥‥まぁ、とりあえずだけど。」




そう言ってポケットから小さめのシンプルなバースデーカードを取り出して宮っちに手渡した。




「え、‥‥これ今見ていいの?」


「ん?‥まぁ、いい、けど‥」




そう言うと、宮っちがにこってしてカードを開いた。





宮っちの目が動いてる。

俺が書いた文を読んでるのが伝わって、なんかそわそわする。




読み終わったのか、宮っちの目が止まった。

そんで、ほんわりと顔が赤くなってる。



書いた俺も恥ずかしかったんだから、もらった宮っちは俺以上だろうな。





「ねぇゆうたくんっ!これ、ほんとっ?」


ばっ、と俺を見た宮っちの目は、‥‥うるうるしてる‥?




「うん。ほんと、だよ?」



目を見てそう返すと、さっきとは違う、柔らかく、しゃぼん玉でも抱き締めるかのようにふんわりと包み込まれた。




「ありがとう、ゆうたくん。‥‥俺ほんとに嬉しい。」


きゅ、と腕に力が込められて、俺も嬉しくて背中に手を回した。









たぶん、アキバ系のものをあげれば間違いなく喜んだろうけど、それじゃつまんないし。

でもその他に何をあげれば喜ぶかなんて、こんなに長い間一緒にいるのにわかんなかった。



だから、こんな日だから、こんな日だからこそ、俺の気持ちを伝えてみた。

普段の俺じゃ、絶対言えないようなこと。
















“ずっと宮っちのそばにいたい。
お星さまになるまでずーっと。”










「ありがとう、ゆうたくん。俺もおんなじ気持ちだよ。」




「ふふ。‥‥誕生日おめでと。宮っち。」












end
あとがき→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ