壱万打リクエスト

□愛してるんだ、本当に
2ページ/4ページ







夜になり、高杉は銀八のアパートの前まで来ていた。
行く途中にあるコンビニで買った、彼の大好きな生クリームがたっぷり乗った苺のショートケーキを片手に軽やかにアパートの階段を駆け上がる。



「(先生、どんな反応すっかな)」



柄にもなく口元を緩めながら、高杉はお目当ての部屋の前まで行ってチャイムを押した。
ピンポーン、と相手を呼び出すチャイムがどことなく軽快に聞こえるのは彼の気持ちの所為かもしれない。
ウキウキと銀八が出てくるのを待つのだが、中々出てこない。
不思議に思い、上着のポケットから銀八の部屋の合鍵を取り出して鍵穴に押し込んだ。
ガチャとドアを開ける。
すると中は真っ暗で、高杉は首を傾げた。



「(アレ?コンビニにでも行ってんのか?)」



靴を脱ぎ、フローリングに足を置くとぐいっ、と闇の中から腕が伸び、押し倒された。
高杉は何が起こったのか理解できず、暴れる。



「テメッ!誰だ!!放しやがれッ!!」
「・・・誰って俺に決まってんだろ」
「放せって・・・え、せ、んせ・・・?」



ほんの少し闇に慣れた目が銀八の銀髪だけを高杉の脳に認識させる。
高杉は相手が銀八だと分かるとほっとして笑みを洩らした。



「なぁにやってんだよ、先生。いきなりだからびびったじゃね・・・」



ダンッッ



高杉は言葉を止め、目を見開く。
フローリングの床に打ち付けられた銀八の拳を見て、不安そうに瞳を揺らした。
何が起こっているのか理解できない。



「せんせ・・・?一体・・・」
「そうやって、笑ってたんだ・・・」
「・・・は?」



銀八の言葉の意味を理解することが出来ず、高杉は眉を潜める。
真っ暗な暗闇の中、銀八の赤い瞳が細められ、冷たく高杉を見下ろしていた。



「俺よりも、アイツがいいわけ?」



銀八の言葉と瞳にゾクッと肩を揺らし、彼から逃げようとした高杉だったが、その時にはもう全てが手遅れだった。
逃げることが、出来なかった。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ