小説
□酒ぐせ
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「白いグミ入りました〜」
陽気な声で叫ぶとパッチールはカショカショと容器を振りながら回り出す。
その前で、ティナはいつできるかと尻尾をぱたぱたさせながら待っていた。
「出来上がり〜」
ティナの顔がパァッと明るくなる、パッチールも満足のそれを一気飲みしたティナは最高の笑顔で飲み終わった。
パッチールもそれを見て、大満足の様子だ。
「ティナ可愛いな〜v」
「うむ。めんこいのう」
「貴方は年のわりにじじくさいですよ?」
「あ、こっちきた」
見るとティナが、コップを持ってこっちに来ようとしていた。
しかし、どことなく足がおぼつかない。
「あ…!!」
不安通り、ティナは何も無い所で足を引っ掛け、危うくこける…という所で、
「む…。危ないぞ、ティナ」
ルギアに助けられた。
「うに〜」
しかし、様子がおかしい。
顔は赤く、目は濡れて、言葉にするとしたならば、誘うという言葉がピッタリだろう。
「ん…。どれ、貸してみろ」
ルギアはティナが持っていたコップをもぎ取ると、匂いを嗅いだ。
途端、ルギアの眉間に皺ができる。
「マスター。これ酒が入ってるぞ」
「ええぇ!?まさか…ああぁ、やっぱりー…。すみません…。こちらの手違いです〜…」
パッチールが急いで瓶の中身を確認すると、いつもの中身ではなく酒が入っていた。
どちらも同じ透明の液体なので間違えたらしい。
「…まぁ、今度からは気をつけてくれ。」
「はい〜…」
申し訳ない、というように耳が下がり、ショボンとするパッチール。
「るぎあーvV」
と、その空気をぶち壊す様にティナがルギアを呼んだ。
「む?…何だ、ティナ…」
「ん…っ」
ちゅ
という小気味良い音を立てて、ティナの唇がルギアの唇に重なった。
「あー…。やっぱり、キス魔になっちゃったかー…」
「…どういう事だ?」
「ティナは酒が入るとキス魔になるんだよ」
それも、ちょっと質の悪い。と、ピカチュウがやれやれといった風に言う。
一方ルギアは、真顔のまま固まっていた。
ティナはそんなルギアに飽きたのか、ルギアの腕の中から抜け出すとピカチュウ達の所へ行った。
「ほーおーもv」
「!?な、なな、な……あ、ありがとうございます…?」
「何で疑問系なんだよ」
うろたえるホウオウに冷静にツッコミを入れるピカチュウ。
「えんていもー」
「むぅ。ありがとうの」
「らいこうにも、すいくんにもvV」
「あ、ありがとうございます…」
「ありがとな」
「えへへーvV」
『可愛い…!!』
酒が回り切り、暴走し始めた所で、ティナの眠気が限界にまで達した。
ティナの身体が固まり、こてんと倒れる。
「今日は、少人数で来てた事だし、こんなもんかー」
「…一応聞いておきますが、大人数だったらどうなってました?」
「そりゃあ、まぁ、……もんのすごい事になるよ?」
ピカチュウが意味ありげに笑いティナを担ぎ上げ、隅の背もたれのある椅子に寝かせた。
「うにゃ〜、みんなだいすきー…」
幸せそうに眠るティナの顔を見ながらルギア以外苦笑して、ため息を一つついた。
(貴女と居ると、本当に退屈しない)
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