小説
□七夕
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夜空にキラキラと輝く無数の光。
その夜空に渡る天の川は織り姫と彦星が再会に成功した証拠。
そう、今日は七夕である。
「では、笹も用意した事だし、願い事でも書きます?」
「うん。そうだね…
というか、皆字、書けるの?」
『書けない事も無い』
「そうなんだ…;」
「あははははは!」
と、突然ピカチュウの笑い声が聞こえ、そのすぐ後に怒ったような声が聞こえてきた。
「…。様子見てくる。」
「大丈夫ですの?」
「大丈夫、大丈夫。こんなに平和になったんだから、今さら変な事も無いでしょ…」
「フフフ…それはどうでしょう、今にでも変態がティナさんを襲うかも知れませんよ…」
手をわきわきしながらジリジリ迫ってくるヨノワールにティナは身の危険を感じ取り、全身に鳥肌が立つ。
後ずさるティナと迫るヨノワールというある種異様な光景を壊したのは、やはり我らが常識人のジュプトルだった。
「だから、お前は自重しろ…!」
「ごふっ…」
「片付いたようですわ。行くならこの隙ですわよ?」
「…;
うん。じゃ、後は頼むね!」
ジュプトルとクレセリアから分かれて、ジラーチの声が聞こえた場所まで走り出す。
ティナはピカチュウとジラーチを見付けると、真っ先に走っていった。
ピカチュウは手にマジックを持っており、それでジラーチの頭の短冊に何か書こうとしていた。
「お前は…っ」
ティナは高く跳躍した。
「何を…っ」
そのまま足をピカチュウに向けて狙いを定める。
「やってんだーー!!」
そして、全力のドロップキック。
「うごふっ…」
ティナのドロップキックをモロに食らったピカチュウは、地面に[今度の探検隊はwiiだ]と書くと、真っ白になって気絶した。
「さり気なく宣伝してる!!;」
「ティナー…。ピカチュウがいじめるー…」
ジラーチはティナに抱き付くと、マジックを手渡した。
それを受け取ったティナは素早くキャップをとり、ピカチュウに落書きを施す。
「うわぁ…。天の川綺麗だねー…」
「ねー…」
ピカチュウを完璧にいなかった事にして、天の川に見とれる2匹。
ピカチュウは小刻みに震えたりするが、起きる気配はない。
「そうだ。ジラーチは短冊に願い事書いた?」
「んーとね、…まだ。」
ティナはジラーチを抱き締めると、一緒に寝転んで星を見た。
夜空に光り輝く星達は、まるで、この星に生きている者達の命の灯火のようである。
「ジラーチは、願い事とかは…無いの?」
「あるよ」
じゃあ、どうして、とティナは小さな声で聞いた。ジラーチはティナの胸に顔を埋めると、ティナに習い、小さく答えた。
「だってもう、叶ってるもん」
ティナは目を丸くしたが、直ぐに微笑んで、そっか…と呟いた。
それから2匹は色んな話をした。
ジラーチは、少しの愚痴と、今まで叶えて来た願い事の話を、ティナは今までの自分の話を、2匹の話は深夜まで続いた。
(ぼくの願い事はね、皆が幸せになる事なんだ!)
(でも、その願い事を叶えてくれたのは、他の誰でもないティナなんだよ?)
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