小説
□言葉をください
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「ありがとうございました。これで家に帰れます!」
「いーよ、いーよ。気をつけて帰ってね?」
「はい!帰ったらお礼持って行きますね。」
「ありがとう」
依頼人が帰って行くと、ティナは木の上に話し掛けた。
「ジュプトル、そんなに心配しなくても私一匹で大丈夫だよ?」
「……」
ジュプトルが黙っていると、ティナの頬に冷たい粒が当たった。
「…あ、雨……」
「…!ティナ。洞窟があそこにある。そこに行こう…」
「あ、うん」
ティナ達が洞窟に入ると、雨は益々激しさを増してきた。
「…ティナは、」
「うん?」
「…ティナは今、幸せか?」
「……じゃあ、ジュプトルは今、幸せ?」
「オレは…今この瞬間にティナと居られる…から、幸せ…だ…」
(顔真っ赤だな…)
「そう?…私も幸せ」
「理由を聞いてもいいか?」
「…私は…皆の笑顔が好きだから。どんなに辛い事が会ったって、皆の笑顔を見れば心があったかくなって…幸せな気持ちになれるから…かな」
「…ふっ…変わらないな…お前は…」
「そっか…変わらないか…」
「ああ、未来でも、何故ポケモン達の為にそこまで出来るのか、聞いた事がある」
「私、なんて言ってた?」
「皆の…皆の笑顔を守りたいからだと言っていた。」
「…そりゃ、そうだよ。だって…」
「私にできる事はそれしか無いから」
(私にできる事はそれしか無いから)
「………」
会話が一段落つくと、ティナの身体がふるりと震えた。
寒さで身体が冷えたのだろう。
「寒いのか?」
「うん。ちょっと…
でも大丈夫だから、心配しないで…」
ふわり…
「…じ、ジュプトル?」
「これで、寒くは無いだろう…?」
「え……うん」
(あったかい…)
「ティナ」
「うん?」
「俺が、ティナを守るから。」
「…うん。期待してるよ?私の―…」
(あの時手を放さなければ、君はあの日の会話を覚えていたのだろうか)
(あの時の言葉をもう一度)
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