片目2

□U
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・揺れ動く心、それは陽炎のように



『ッ、神、威……』


潤んだ瞳で俺を見上げる望愛
ねえ、それは意識してやってるの?
何で分からないの?
そういう行為が俺を煽って
俺に火を付けてるということに。


ねぇ?馬鹿なの?



俺は望愛の腕を引き寄せ、自分の胸に収めた。
小さな体は簡単に収まって、
温かくて本当に俺の腕の中にいるんだと実感させられる。

望愛はというと突然のことで
何が起こったかわからなかったみたいだが
しばらくするとようやく状況が整理出来てきたみたいで
口は酸素を求める金魚のようにパクパクさせ、
顔を赤くし頬を紅潮させてた。

言葉を必死になって話そうとするが
羞恥と緊張がぐるぐると入り混じり言葉を話せていない状態だ



『え…あ、あ…か、かかか……
か、か、か、む…………か、か、むい、ちょ、……これ…こ、ここけ、これ……』



もはや人語でもない。
というより、壊れた玩具みたい。



だけど言いたい事は容易に分かる。
こいつの言いたい事なんて反応をみたら…
それは勿論俺にとって嬉しいことじゃないくらい…………



『…かむ、い……その、あの…』


真剣な顔で俺を見る望愛


けど、俺はそんな望愛に残酷な言葉を投げ掛けた。




















「ハハ何本気になってんのさ」



『…………え』



望愛は目を大きく広げ俺を見上げた。


それはまさに驚愕の表情。


けど俺の口は止まらない。



「冗談に決まってるだろ。びっくりした?」

ケラケラと笑いながら望愛を腕から解放して笑って見せる。


多分望愛のことだ。

顔を真っ赤にして怒鳴るんだろう。

神威の馬鹿、死ね!くたばれ!かな?




『…な…い…だ。』


「ん?」



その刹那、俺の左頬にバチーンという大きな音が響いた。
そして同時に痛みも走った。


頭がグラリと揺れる。



望愛にビンタされたのだと気付くのにそう時間はかからなかった。


『アンタなんて最低だ……!!』


大きな黒の瞳は揺れ、
眼帯の付けていない左頬からは大粒の涙が伝っていた。





「……俺は、お前が思ってるほど良い奴じゃない。
俺は嘘吐きなんだよ。」


望愛の後頭部を手で固定して
噛み付くように唇を荒々しく密着させた。


そして逃げられないよう、腰もしっかりホールドする。



『んんっ……ッ!』


何度も口角を変え、たまに舌を絡める。
望愛は苦しそうに必死に息をしようとする。
俺はたまに酸素を吸わせるために唇を離すが、
すぐにまた唇を密着させて何度もキスを繰り返す。





ほんと何やってるんだ俺は。
好きだと言いながらも答えを聞きたくなくて…矛盾してる。

嘘を吐いて、傷付けて、泣かして


…そして今、また現在進行形で傷つけている。



大事にすると、傷つけないと自分で決めていたくせに俺は…


結局は俺も鳳仙の旦那と同じなんだ。



近付くたびに爪を立て傷つける。



こんなにも大切で、好きなのに。



傷付けたくなければ、突き放したらいい。
だけどそんなこと死んでも嫌だ。


ほらね、

結局俺はこいつを………
望愛を傷つけるしかないんだ。






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