「亮、お帰りなさい」 目を擦りながら部屋の主を迎え入れる。きっとまたデュエルをして来たんだと思う。私の頬に触れた手が熱かったから。 「遅かったね」 「ああ」 上着をハンガーにかけながら亮は答える。もう私は眠くてたまらない。 「もうお前はベッドで寝ていろ」 「そうします。眠くて眠くて」 あくびをしながら布団に潜り込むとひんやりとした感覚で少し目が覚める。よく考えたらこれでは亮が寝る場所がない。眠さに負けて部屋の主を床に転がすところだった。 「あのー、私はやっぱりソファーの方で……」 部屋着に着替えているであろう亮に問うてみる。 「何故だ。眠いのだろう?」 寝室に入ってきた亮は私にそのまま寝ろと言う。ならば亮は一体どこに寝るというのだ。明日は試合なのだから少しでも疲れをとった方がいい。そもそも試合を見たいと言った私をわざわざ泊めてくれているのだ。亮が帰ってくるのが予想以上に遅く眠かったとはいえこれはよろしくない。起きよう。 寝ぼけ眼でむくりと起き上がると亮に再び布団に押し戻された。 「そのまま寝ていろ」 「ん……でも……」 布団の誘惑に負けてしまいそうになる。 「……?」 布団にスッと冷気が入り込む。寒いなと思った次の瞬間には温かかった。 「気にするな、俺はここで寝る」 ぽんぽんっと布団を叩き、寝かしつけようとする。お兄ちゃん、というのはずっとお兄ちゃんのままなんだなと思った。 「狭くないですか?」 「いや」 「そうですか」 「もう寝ろ」 「……」 寝ろと言われても何だか困る。亮が眠ったらソファーに移動しようか。隣では既にスースーと寝息が聞こえる。やっぱりデュエルをして疲れてたんだと思う。衝撃増幅装置を使ったのかもしれない。きっと体には良くない。そんなことを考えながらチラリと横を見る。今なら大丈夫だろうか。そろそろと体の向きを変えてみる。と、ぎゅっと抱き締められた。 「……っ!」 動けない。亮は寝ている、のだと思う。服越しに伝わる熱と吐息で目が覚める。 それでも安心する体温と強い睡魔には勝てなかった。 寝ている君にキスをひとつ |