ゆめ3
□千年錫杖の記憶
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「あの千年錫杖でしょう?いつもマリクくんが持っている。」
「誰から聞いた。」
「ん、遊戯くん。」
「ふん、余計なことを。」
千年錫杖の持つ記憶。海馬がそれを視たのではないか、という推測を聞いたのだ。
劣勢状態で神オベリスクを召喚。もちろん状況を覆すには十分過ぎるほどの力を持つそのカード。それなのに何故勝ちを確信した攻撃宣言を止めたのか。
遊戯は言っていた。答えはその瞬間輝いた千年錫杖にあるに違いないと。
「聞いてみたかったの。海馬くんは何を視たの?」
答えは返ってこない。パソコンのキーボードを滑らかに叩く音がするだけ。私は待った。
「青眼だ。」
「え?」
タンッというエンターキーを押した音が一際大きく響いた。
「俺は青眼を信じた。ただ、それだけだ。」
いつもの海馬らしい答え。しかし神を生け贄にしてまで青眼を呼ぶなんて有り得るのか。例えそれが信頼を一身に受ける忠実な僕だとしても。
「今の答えが不満なようだな。」
「そんなことは…。」
「ふっ、そうか。」
海馬の意識はもうこちらに向いていない。パソコンの画面を見つめ指を世話しなく動かしていた。
記憶の話を聞いてからどうしても気になって頭から離れなかった。私は特別な存在なんかじゃない。気の遠くなるような昔の記憶なんて関係ないはずで。それでも、もしかしたらと思ってしまった。
初めて青眼を見たときの懐かしさが忘れられなくて…。
千年錫杖の記憶