ゆめ
□深い眠りへの口付け
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どうしたら貴方を殺せるか。寝ても覚めても、そればかりが頭を苦しめる。
深い眠りへの口付け
ふと、眼が覚めた。寝付きが悪かったのかもしれない。隣にいるのは大好きな瀬人。起き上がって、寝顔を見つめる。その寝顔は整っていて、自分が知っている瀬人だった。
「ねぇ、瀬人…。」
瀬人は名前を読んでも気が付かない。でも、それでいい。今の私は言うのも恐ろしいことしか考えていないのだから。頭の中は貴方のことばかり。学校に行って話しかけられる瀬人。先生と話をする瀬人。女の子に見られている瀬人。もしかしたら、他の女の子の名前を呼んでいるかもしれない。もしかしたら、他の女の子に触れられているのかもしれない。もしかしたら、もしかしたら…。私はみんなみんな知らない。瀬人のことなら何もかも全部知りたいのに、知る術は無い。こんなのは苦痛でしかない。
「瀬人、私に教えてよ。」
もちろん、瀬人から返事はない。確かに他の女の子の名前を呼んだり、他の人に話しかけたりするのは普通のこと。だけど、私にとっては…。
「ねぇ、せめて今だけ、私の名を呼んで?」
「………っ。」
瀬人が呟いた。それは私に決意させるのに十分だった。もう頭の中は貴方だけ。
「瀬人、貴方を殺します。」
瀬人は、私の知らない名前を紡いだのだから。
深い眠りへの口付け
(自分が楽になるために、瀬人を楽にするために。)