□放課後図書室
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放課後の図書室


夕陽が部屋に差し込み部屋を赤くさせる

机に大量の本を積み重ね、筆を走らせている兵助の姿があった


兵助は予習復習のためよく図書室を利用していた

図書室は静かだし本の種類が多いので勉強するにはとっても良い場所なのだ

それに図書室には中在家先輩がいるので分からない所があれば聞けるので便利だ


「えっと…ここは」

う〜ん。
と予習をしていて分からない箇所があり後1つで終わるのだが、最後の問題で困ってうねっていた
筆を走らせるのを止め休憩を少しだけとり外を見てみる


「あ、もうこんな時間なのか」


外はもう夕陽が沈みかける時間になっていた
夏なのでまだ陽が長いので今何刻なのか感覚が時々分からなくなる

「もうそろそろで晩ご飯の時間か。けどこれ解いてから行きたいしな…」

困っていると、後ろから肩を叩かれた


気配が全く無かったのでビクッと肩を震わせ、後ろを振り向くとそこには図書委員長の長次が立っていた


「あ、もしかして閉館の時間ですか?」


すると長次は黙ったまま兵助の後ろに座り込んだ

「…あの?」

「いい」

長次の声は相変わらず小さかった
「それ解いてからで良い」

兵助の手元の問題集を指差しており、長次は南蛮の書を読み始めた

兵助は長次にお礼を言い、再び問題集に手をつけ始めた
だが相変わらず最後の一問だけが解けなかったのだ
先輩を待たすのも悪いと思い兵助はいつものように長次に解説をお願いすることにした


「読書中すいません先輩。後1つで終わるのですが、なかなか解けないので教えてもらえないでしょうか?」

長次は頷き本を自分の横に置き、積み重なられていた白紙の紙を一枚取り、兵助の悩んでいる問題を見つめること一分。白紙の紙に綺麗で丁寧な字で解説を書き始めた

ぼそぼそと言う聞こえづらい声を必死に聞き取りながら、兵助は問題の内容を理解していく


数分経つと長次の教えが良かったのか、今まであったモヤモヤが今では無くなりスッキリしていた


「先輩ありがとうございます。先輩のおかげで全部出来ました」


すると長次は兵助の頭を撫でた
そして長次の顔は滅多に見られない怖い笑顔じゃなく柔らかい笑顔をしていた

優しい表情に兵助はその笑顔をずっと見ていたいと思ってしまった

「…」

「…」


しばらくの沈黙が流れる

カーン、カーン

と夕刻を知らせる鐘が学園中に鳴り渡る
その鐘がきっかけに固まっていた体が動き出した


「あ、すいません。本当にありがとうございました」
長次の手が頭から離れると兵助は急いで片付けをし始める
すると長次は後ろから抱きつき、兵助が片付ける手の上に自分の手を重ねた

兵助より傷が多く、少し大きい手だった

「先輩?」

「まだ小さいな」

「え?」

耳元で囁く長次の声がいつもより大きな声で鮮明に聞こえた

「だから、守りたいと思ってしまう」

「先輩?」

兵助は長次に抱き締められ恥ずかしくなる

「い、一体どうしたんですか!?」

「…好きだ」

「!!」


思いもしなかった言葉に驚いて長次の方を見る

一見はいつもと同じ無表情な顔をしているが、少し違って見える

まるで悲しそうな顔だ

「先輩…」

「こんなことを言うのは困るとは分かっている。だがお前のことが…」

長次の思いは本当らしく、段々と手を握る力が強くなる
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