□届かない想い
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私は毒虫好き

意外とロマンチストと言われることもある


けど本当は毒虫より好きな人がいる




『届かない想い』




今日も朝起きたら長屋を出て虫小屋に向かい、ペットたちに餌を与える


それが孫兵の習慣なのだ

いつからか分からないが虫が好きだった
回りからは気持ち悪いと言われたこともあった

だけど、貴方だけは気持ち悪いとは言わなかった


ペットに餌を与えていると孫兵の後ろから足音が聞こえる
少しだけ後ろを向くと藍色の頭巾が見えた


「おーい孫兵」

「竹谷先輩」


声の主は生物委員会代理委員長の竹谷だった
朝日が眩しそうに手で視界から朝日を遮りながら孫兵の隣に立った


「もう朝ごはんの時間だぞ?虫たちが可愛いのは分かるが自分もご飯を食べないとな」


「…はい。後ジュンコたちに餌をあげたら終わりなので」

それから行きます。と言うと竹谷はしゃがみこみ孫兵の手にある餌を半分取り他の虫たちに与える

「そか、なら一緒にやった方が早いだろ?さっさとやって一緒に食堂行こうな!」


「あ、はい。ありがとうございます!」


「良いってことよ!」


太陽みたいな笑顔
まるで夏の太陽のように焦がれる
私には竹谷先輩は眩しくて目を背けそうになる

私は竹谷先輩を…

「どうした孫兵?」


手を止めている孫兵に気づいた竹谷


「ッ!…い、いえ」


気をまぎらわすようにジュンコに餌を与える
「よし、もうコレで朝のは終わりだな」

「ありがとうございます。おかげで早く済みました」


「良いってことよ。いつもほとんど一人で餌を与えてるって大変じゃないか?」

「い、いえ!私が好きでやっていることなので大丈夫です!」


竹谷は口元に指を持っていき考える姿をとった

「けど、大変なら無理しなくて良いぞ?オレは委員長代理で頼りないかもしれないが、孫兵一人に餌やりの負担をかけさせたくないからな」

自分のために悩んでくれる
それだけでも孫兵は嬉しかった

「なら、夜は流石にこの虫たちの量に餌を与えるのは難しいので夜だけでも生物委員会で頼めれますか?」

「ああ!」

優しい先輩に笑いながら夜だけ頼む
すると竹谷も笑いながら孫兵の頭に手を置き頭をわしわしと撫でる


先輩の手は暖かい
本当に太陽みたいだ


「よし、朝ごはん食べに行くか!」


頭から手を離し、食堂へと足をだす
孫兵もその後ろを歩きだす


竹谷の背中を見る
たった2つしか変わらない背

そのたった2つが追い付けない
背も自分のと違い大きい

「……」


手を伸ばそうと思っても遠いところに先輩はいるようで決して届かない


「どうした孫兵?」


孫兵の気配に気づいたのか後ろを振り替えったのにビックリして手を引っ込める

「い、いえなんでも!」

孫兵は恥ずかしさで顔を少し紅くする
竹谷は首を傾げる

「そうか?なら良いが」

竹谷は再び前を向き歩きだした

ドキドキする胸を押さえる
やはり自分は…
竹谷先輩のことを…


お慕い申しあげてる


だけど先輩には絶対に言えない


なぜなら先輩には…
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