□雷
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5年の長屋の雷蔵・三郎の部屋。




もう就寝時間のため部屋の灯りを消している。


だが、夕方からいきなり天候が悪くなり、外からは閃光が走る。



雷蔵は雷が怖かった。


名前に雷がついているが雷は怖い。


「………」


三郎にバレないように必死に冷静を装い、眠ろうとする。


だが、恐怖心の方が勝ってしまい今にも叫びそうになる。

隣の三郎の方を見るともう眠っていた。


雷が平気な人が羨ましい

怖い
怖い
怖い

なんであんな音が激しいのに普通に眠れるんだよ!!!

内心叫びながら布団の中で丸くなり、必死に絶える。


雷蔵は今にも泣きそうな顔をする。
目尻に涙がたまってきた。

すると、いきなり聞こえてきた声


「らーいぞー」

「な、な、なに!?」


いきなり三郎の声が聞こえ、焦る雷蔵
そして声が震える。
泣きかけなのがバレると思い、急いで涙を拭った。


「………私さ、雷怖いんだよね。だから雷蔵と一緒の布団で寝ていい?」

「え?」


すると有無を言わず三郎は雷蔵の布団の中に入ってきて、雷蔵の隣に寝転がった。


「さ、三郎!!」

「良いじゃん。怖いんだからさ、一緒に寝てよ」



三郎は雷蔵を布団の中で抱き締めた。


「ほら、寒いしさ。これなら怖くないし暖かいだろ?」


三郎の優しい低い声。


暖かい腕。


雷蔵は三郎の手を握る。


手を握っているところから三郎の体温が感じられ、それだけでも、雷蔵には嬉しかった。



温もりに安心したのか、だんだん眠気が襲ってくる。



瞼がもうくっつきそうになり、


「ありがと…さぶ、ろ…」


そう言うと雷蔵からは一定のリズムで寝息が聞こえる。



やはり三郎のは演技だったのはバレていたらしく、三郎は気持ちよさそうに寝る雷蔵の頭を軽く撫でてやる。



「おやすみ、雷蔵」


明日の夜は覚悟しとけよ?


額にキスをおとし三郎も寝始めた。


この一緒にいられる一時が二人には好きなときなのだ。





雷はいつの間にか聞こえなくなっていた。






 
 

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