その他ー

□縮めるには近すぎて
1ページ/1ページ




私が悪いわけではないはずだった。

でも、アイツが悪いわけでも無かった。

それでもってあの子が悪いわけでも無い。

じゃあやっぱり悪いのは私か。



「すみません」

『!?く、黒子君・・・。』

「これ返したいんですが」

『あ、うん。』


図書委員の私は毎週月、金と当番であったりする。

黒子君はちょうど、月曜日に借りて行って、金曜日に返すという行動パターンだ。

少し話したりするのが楽しかったりする。

でも、今日は違う。



「テツ君ってこんな本読むんだね!」

「意外ですか?」

「ううん!そんな感じ」



たしか、桃井さつきさん。可愛くてスタイルもいい人。

凄く女の子らしくて、女の私が見てもきれいだと思ってしまう。



『あ、本棚にコレ返さなきゃ』



溜まっていた本を一つ一つ本棚へと返す。

いつもは黒子君が手伝ってくれるけど、今日は一人だ。

私は黒子君達を視界に入れないように、本棚の影に隠れた。



『本当、何やってんだろ』

「何やってるんですか?」

『・・・っ!』



持っていた本が床に散らばる。

多分私は、泣きそうな顔してるんだろうな



『ど、どうしたの?も、桃井さんは?』

「桃井さんは、あっちにいますよ。
で、用件は今度読む本でお勧めを聞こうと思って」

『そっかぁ。お勧めはコレかなー?』

「どういう話なんですか?」

『お、女の子が男の子に恋をしていく話・・・。』

「そういうの好きなんですか?」

『うん。へ、変だよね!』

「変なんかじゃないですよ。でもこんなに鈍いのは変ですよ」



悪戯っ子のような顔で笑う黒子君。

笑ったところ初めて見たかも・・・!

やっぱりキレイな顔だな



『に、鈍い?』

「これ借りてきますね」



ちゅとリップ音が頭の中で響く。

唇に当たった柔らかい感触とドアップの黒子君の顔が

脳裏に焼きついて離れない。



縮めるには近すぎて
(本の中身、メロスだった・・・)



 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ