短編

□世界を欺くかのよう
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何を考えてるのか、全く分からないような笑み。
いや、本当に笑っているのかも分からない。怖いなんて感情は全くない、ただ分からないだけだ。
それが嫌で、怖くて、涙が出た。
死んでいく人に同情したわけでも、あざ笑うわけでもなく泣いた。




「キミは泣き虫だネ」

『すい、ませんっ』



謝りながらも、泣く。止める方法がわからない。嗚呼、だから涙が出るのか



「もう、鬱陶しいなぁ」

『すいません、』

「ねぇ、鬱陶しいって言ってるんだけど」



子供のころ、見た花畑なんかよりずっと血を見たほうがゾッとした。
体が疼くような、なんともいえない感情がこみ上げた。

私の仮の両親は酷な顔をして私を見た。夜兎の血が流れている、だからなんだ。別にどうってことないじゃないか

だから、どうしてそんな顔するの



『だん、ちょ』

「聞こえないの、鬱陶しいって言ってるんだけどなぁ」



張り付いた笑顔の団長が、私を見つめる。血まみれの団長が私に触れる。錆びた金属のような臭いが鼻を掠めて、頬にあたる

まわりには、もはや人とはいえないナニカが散らばっていてまさに地獄絵図。
暫く血だらけの手で、流れ出る涙を拭って遊んでいるかと思ったら頬を思いっきり抓られた。



『っ、』

「アハハ、変な顔」



痛さのあまり、声が出せなくて強く目を瞑る。痛みでも涙で出て、気に食わなかったのか更に力が増す。

気分で生きているような人だ、いつ殺されてもおかしくはない
でも、死にたくないなんて思わなかった。何故?わからない、わからないよ



「わかんないかなぁ」



「泣かないでって言ってるんだけど」



パッと開放された頬。絶対に痣になっているだろうソコを両手で押さえる。
ヒリヒリと焼きつくような痛みに、また涙が出た。




「ほら、笑いなよ」



世界を欺くかのように
貴方のかわりに私が泣く





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