短編

□冷たい口付けを
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春だというのに気温は30度。まったく暑いってば
しかも、窓から見える大粒の雨。ジメジメせっかくセットした髪も台無しじゃないか。
あー蒸し暑いー。



『地球滅びないかなー』

「なんつーこと言ってんだよ」


隣で涼しげな顔で煙管を吹かす高杉。どうも、この臭いは好かない。
まったく世界壊そうとしてる人に、そんなこと言われる筋合いはないわ。



『蒸し暑いのよ。近づかないで』

「そーかよ」


煙管の臭いに顔を歪ませたら、アイツは喉を鳴らして笑った。
まったくもって不愉快、まるで猫ね。



『なに』

「今日は珍しくしゃべるじゃねーか」

『そうかしら』

「なにがあった」

『別に』



はぐらかす様にいろいろよ、と付け足すといろいろってなんだよなんて言ってきた。
まるで子供ね



『暑いの、』

「知るか」



なんて横暴な奴だ。暑いといってるのに、ピッタリと背中を合わせてくる。
離れたいけど、正直自分で動くのもめんどくさい。



『あなたの創る世界は涼しいのかしら』

「俺は壊すだけだ、」

『その後は何をするの』

「お前の望むことをしてやるよ」

『それはそれは』

「お前な・・・」

『何よ』

「何考えてんだ」

『いろいろよ』



あなたが世界を壊すなら、私は世界を創る
あなたが泣くなら、私は笑うわ
あなたが愛さないのなら、私はあなたを愛すわ

独特の臭いに顔を背けて、笑った。
止みそうにもない雨の中で
――――冷たい口付けを



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