戦国

□ただいま、
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少し小腹が空いたので団子を口に運ぶ。
弾力がある中に甘さが口いっぱいに広がる。

だが“甘い”だけで“美味しい”とは思えなかった。


何日か前の自分だったらそんな事はなかったが今は“甘いだけのお菓子”だ。

食べかけだが袋に戻してまた空を見上げた。


すると、一匹の大きな鳥が近くの木に止まった。
よく見ると鳥は真っ黒な鴉だとわかった。
とても目付きが冷たい鴉は方羽に怪我をしている。

幸村は鴉に近づく。
鴉は逃げようとはしなかった。
そんな鴉に小さく微笑むと頭を撫でてやった。



「……お前、あいつに似てるな。」



撫でるのを止めると鴉は真っ直ぐと幸村を見つめてきた。



「あいつと言うのはな、某の忍で……こっ…恋人…でな、殆ど自分のためなのに、たまにだけ…某のために無茶な事をしたりするんだ。」



――そんな所も、好きなんだ……。――



ぽたりと瞳から涙が溢れ出てきた。
そのせいで視界が歪んで周りがどうなっているか分からない。


バサバサバサ



「あっ!」



そんな幸村を置いていって鴉は去っていってしまった。
幸村は何も出来ずに立ちすくしてしまった。

誰も居ない、このまま闇に飲み込まれてしまいそうだ…。

そう思うと無性に人肌が恋しくなってきた。



「うっ…さ、すけ……佐助…っ!!」









「なに、旦那?」






陽気で明るい声。
からかう様な感じのなかにどこか嬉しさが交じって聞こえてくる。


今、求めていた人物…。



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