戦国

□ただいま、
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まだ肌寒い夜の中幸村は空に居座っている月を見上げていた。

今の幸村は魅力的で誰もがその場に立ち止まり見入ってしまうだろう。
少し乱れた着物から見える白い肌。
月光を浴びている所も綺麗で美しい。



「――……ハァ…。」



これで何度目かのため息を吐いていた。
だが今の幸村にはそんな事気付いていないだろう。

幸村の頭の中は今、傍に居ない忍の事で一杯なのだ。


佐助は任務でニ週間ほど幸村の傍を離れて仕事をしていた。
毎日その日に何があったか伝書鳩を使って報告していた。
一様短いながらも個人的な言葉もあった。
“ちゃんとご飯食べてる?”“一人で無茶な事してない?”“修行だぁっ!て言って怪我とかしてないよね?”“……早く旦那に会いたい…”

殆ど当っていた(怪我をしていないかの所が)。
得に最後のは一気に顔が熱くなって恥ずかしかったが少し嬉しかった。


だが五日前、プツリと報告が途絶えてしまった。


“佐助の事だ、任務を終えて帰ってくるだろう”そう初めは思っていたが、日が経つにつれて胸の奥にモヤモヤとした物が現われるようになった。

夜も眠れず、こうして空を眺めている時間が増えていった。
本当なら佐助はこの場に居て幸村と一緒に居る筈だ。

だけど佐助はここに居ない。


そんな幸村を心配したのか才蔵が団子を買ってきてくれた。
珍しい事で驚いたが有り難く受け取っておいた。



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