爆風草子
□町へ逝こう!
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───そこに生きる小さき蕾
花開かずに枯れゆく
ここに再び芽吹けばまた
非力ながらも蕾をつける
ここで散る訳にはいかぬともがけ
底の闇より這い上がれ
そこで散れば
汝の生と引き替えに
汝の悔いのみぞ残る
生きよ
己の信念の元に貫き通せ
恐れるものは何も無い
開花せよ
それが汝の望み
それが汝の使命
「───!」
誰かの声がする。
「──ご、翔吾!起きろ!」
何だ 晃平か…。
まだ朝早くない?
…てか、さっきまで道場に居るシーンじゃなかったっけ!?
「もーちょっと…」
せめてあと五分。
五分でいいから俺に睡眠という快楽を与えてくれ。
「翔ちゃーん
朝ですよーっ」
翔…"ちゃん"!?
「晃平!お前いつからそんな女々しくなった!?」
がばっと起き上がると同時に叫ぶ翔吾。
だが、そこに立っていたのは晃平ではなかった。
「あ……」
「お目覚めかーい、翔吾君。昨日道場から帰ったきり、夕食もとらずにずーっと眠ってたんだよ?
よっぽど疲れてたんだねぇ〜」
色素の薄いポニーテール、柔らかな笑み。
沖田さんか…。
そーだ。
俺、今幕末に居るんだっけ。てか、死んだんだっけ…。…まとめよう。
そーだ。俺、死んで何故か幕末に来たんだっけ。
「晃平って?」
「俺の友達です」
へー、と笑顔で返した後、沖田が俺に何かを手渡した。
「袴?」
「そ。昨日みたいな格好だと、皆に怪しまれるから。
あの格好で町に出たら、異国人に見られて尊攘派に始末されるかもねっ」
「はは…」
なんか怖いことを笑顔で言われた気がする。
そこは気にしないでおこう。
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