Short Dream

□夏祭りに行きましょう
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ケース@湯川先生と夏祭り


「わーー先生、屋台ですよ」


「ああ」


「せんせーー金魚だー」


「そうだな」


さっきから何とも言えない疲労感にさいなまれている。

隣を歩く教え子兼恋人は立ち並ぶ屋台に目を輝かせている。その目がまるで子どもだ。さらにこの人ごみだ。

彼女には悪いが、さっさとここを通り抜けたい気持ちが募る。


さて、当の彼女だが、いろんな屋台に目を輝かせていたが、特に心惹かれる屋台があるらしい。

視線の先にはりんご飴の屋台。

僕はあのりんごに飴をかけただけの食べ物にどうしてそこまで心惹かれるのか全く理解できないが、彼女はあれが食べたいらしい。


「食べたいのか?」


分かり切った質問だが一応聞いておく。僕の顔を見て何度か目をぱちぱちさせた後、こくりと頷いた。

すでに取り出していた財布を開け、一本買い、渡してやる。

理解できない食べ物なのに買い与えてしまうのは甘やかしすぎだろうか。しかし、笑顔でかじりつく姿を見ると買ってやって正解だと思う。


「なんて非論理的なんだ」


「先生?」


「あ…いや、なんでもない」


「…変なのー」


ふわふわと笑いながらりんご飴をかじる。

だがしかし、さっきからすれ違う人間に何度もぶつかりそうになっているのだ。どうやら1つのことにしか集中できないらしい。

そのたびに腕を引きよせるのだが、全く懲りる様子もない。


「わ、」


「!!」


隣で彼女の頭が大きく揺れる。


「…びっくりしたあ」


危うく転びかけるところだった所を何とか止められた。


「危ないな。歩くか食べるかどっちかにしたらどうだ」


「えへへーごめんなさい」


「…」


頭が痛い。


「先生?」


「さっきから子どもと歩いている気分だ」


「な、どういうことですか!?子ども扱いしないでください」


「そういうところが既に子どもだ」


「失礼ですね!!そりゃあ先生より年下ですけどね、…」



もう彼女を祭りには連れてこない、そう誓った夏だった。




保護者兼恋人



2009.08.17



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