Short Dream
□bless you!!
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「くしゅん」
前を向いて歩いていた湯川先生がこっちを見た。
「風邪か」
「うーん、そうみたいですね。最近朝晩は涼しくなりましたからねえ」
「帰ろう」
「嫌ですよ」
いきなり何言い出すの。デートはこれからなのに。
「どうせせっかくのデートだから帰りたくないとでも言うのだろう」
図星。
「くしゅん」
返事の代わりにくしゃみが出た。そんな私を見て先生はジャケットを脱いで私に着せた。
「もう秋だというのにどうしてそんなに薄着なのだ」
「おしゃれは我慢ですから」
湯川先生が寒がりなのもあると思うんだけど。
「なら風邪も自業自得だな」
「…ですよね」
それでも己を高める意識が女子にはあることを解いても先生が理解してくれるとは到底思えないから黙ることにした。
「くしゅん」
「また」
「くしゅん」
「ほらまた」
「いちいち言わないでください」
「やっぱり帰ろう」
「絶対いやです。次のデートがいつになるかもわからないんですから」
すると先生は悲しげな表情になってしまった。
「…すまない。確かに君の言う通りだ。僕は二人の時間もろくに作れない
デートなどいつでも出来ると言ってやれないのが心苦しい」
「やだ、そんな顔しないでくださいよ。私、デートなんてしなくても湯川先生のこと、くしゅん」
肝心なところがくしゃみで言えなかった。沈んだ顔をしていた湯川先生がぶはっと吹き出した。
「すいませ…」
「仕方ないな」
先生はまだくっくっと笑いながら私の肩を抱き寄せた。
「っ先生、」
「こうすればあたたかい」
そして目をそらしてぼそりと言った。
「今日は特別だ」
「…はい」
bless you!!
2009.09.03
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