Short Dream

□試験勉強しましょう
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「…で、こうなるの。わかった?」


「分かんねえ」


「…」


私は今、草薙くんの試験勉強に付き合っている。


「俺は理系科目が出来ないから社会学部に入ったんだよ」


「それを私に言われても…」


それは社会学に数学は要らない、と早合点した草薙くんが悪いと思う。


「よし、諦めよう。単位取れなくていい」


「次落としたら留年するんじゃなかったの?」


「…そうだった」


「だから女の子と遊んでないで講義出ればよかったのよ」


「もしかして怒ってる?」


草薙くんが私の顔を覗きこんだ。

その途端、心臓が煩くなった。


「何で怒るの?俺みたいなだらしないのなんかダブればいいって思うんだろ?普通」


「…」


「参ったな、そんな反応されたら」


きっと私は真っ赤な顔をしているのだろう。

ああ、バレちゃったんだ。

草薙くんが嬉しそうな顔をしてる。


「そっか、片想いじゃなかったのか」


「!?」


それはおかしい。

地味で、毎日真面目に講義に出てる私なんか。私なんか彼の目に映るはずないのに。


「勉強、しないと、留年しちゃうんでしょ?」


「…ん、そうだった」


草薙くんは意外にあっさり引き下がった。

と思われたのに。


「留年しなかったら、いいんだよな?」


「……ん」


その慣れた感じが嫌だ、と思ったのに頷いてしまう自分がいた。





彼が留年しませんように

(そうしたら、彼に好きと言ってみよう)



2009.7.16


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