Short Dream
□雨降りの日に
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研究室に入ると、普段は淀んだ空気が支配するそこは、雨の匂いとひんやりとした湿気で満ちていた。
大掃除のときくらいしか開けられない窓が開けられていた。
開けた本人は、窓際にたたずんでいる。
「 」
彼女の名を呼ぼうとしたが、のどのところで詰まった。
泣いていたからだ。
僕の存在には気づいていないのだろう。
窓の外を見つめ、声を上げることも、鼻をすすることも、溢れる涙を拭うこともせず、ただはらはらと涙を流している。
とめどなく涙は頬を滑り、頬から落ちた滴は雨と一緒になって更に下へと落ちて行った。
声がかけられなかった。
ただただ、見つめていた。
憂いを帯びた彼女の眼はなぜかとても澄んでいて。
涙を流す君はとても美しくて。
頬を伝う涙と、空を伝う雨
(お願いだ)
(まだ気付かないでくれ)
(もうすこしだけ、彼女を見つめさせてくれ)
×湯川先生でした。
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