Short Dream

□6月の花嫁
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「そうか、おめでとう」


向かい側に座る二人に素直に祝辞を送る。


「ありがとう」


彼女は学生時代からほとんど変わらない笑顔で応えた。

そんな彼女の隣に座る猫背な石神の姿も一緒だった。


「それにしても、まだ結婚してなかったのか」


「長く付き合いすぎて結婚するのを忘れてたのよ」


学生のころから3人で集まるときは必ずこの大学に近い居酒屋だった。

だがここ数年は機会がなかった。

この二人と顔を合わせるのも久しぶりだった。


「それで、式はどうするんだ」


「…それは、」


「うん、やらないことにしたの」


もごもごという石神とは対照に彼女のほうはきっぱりと言い切った。


「どうしてだ」


「彼女はきっと綺麗だろうが、僕なんかが隣にいても笑われるだけだからな。こんな姿になっては」


隣に座る哲哉はぽつりとこぼした。


「まだそんなこと言うの。そんな理由で式をやらないことにしたんじゃないでしょ」


「なら、どうしてなんだ」


僕がそう聞くと、彼女は照れ臭そうに微笑んだ。


「ドレスなんて着たら、お腹が目立っちゃうから」


「…まさか」


「うん、そのまさか」


言われてみればあんなに酒好きの彼女が居酒屋にいながら今日は一滴も飲んでいない。


「…そうか…それは、重ねておめでとう」



彼女はもちろん、うつむきがちな彼の嬉しそうな表情が印象的だった。




それは、おめでとう

(彼にそんな顔をさせてやれるのは)

(昔から彼女だけだった)



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