Novels.NARUTO


□夕日のせいだと君は言った
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今日も、また綴る
あなたの日常を
私の、苦しみを



夕日のせいだと
君は言った




カリカリカリカリ...

誰もいない教室に、無情なシャーペンの音が響く。

風がふわりと吹いて、カーテンが静かに舞った。

サクラは髪の毛を耳にかけると、またシャーペン片手に日誌を書く。

黒板はもう一人の日直、日向ネジが消していってくれた。

当の本人は今日は用事があるからと言って帰ってしまったが。

1.英語...

2.数学...

3.国語...

授業の欄をスラスラと埋めていく。

途中、数学の授業でナルトが3×6の計算を40と間違えて紅先生に怒られていたのを思い出し、苦笑いをした。

そして全部書き終えると「その他」の欄を見た。

ここは既に「その他」の役目を務めておらず、生徒達の落書きの場所になっている。

生徒がどうでもいいことを書き、先生が毎回必ずコメントをしてくれる。

この間ナルトが「先生の素顔が見たいってばよ!」と書いていたが、「また今度ね」と軽く流されていた。

これには生徒一同皆ガッカリしただろう。

さて、今日は何を書こうかしら。

サクラは席を立った。

椅子がカタン、と音を立てる。

廊下に出ると、校舎裏がよく見える窓を覗いた。


――ほら、やっぱり。


――いっつもいるんだから。


サクラは教室に戻ると、風で捲れていた日誌のページを再び捲った。

そしてシャーペンを持つと、

その他の欄に向かう。



今日も、告白されてました。

              』

サクラは、日誌をパタリと閉じた。

風がサワサワと吹いている。

暫く、席に座りぼーっとしていた。

毎回毎回、同じことを書いている。

それでも先生は飽きずに毎回コメントをくれる。

「あいつはモテるんだから、しょうがないでしょ」

そう。

彼はモテる。

しょうがないのは分かってるんだけど、それでも彼を好きな人の一人として、やっぱり嫉妬はしちゃう。

「だったら、サクラも告白しちゃったら?」

一度だけ、そう書かれたことがあった。

まったく。

それができたらどれだけ楽か、先生だって知ってるだろうに。

私と彼とナルト。

一年生の時から三人組で、いつも一緒だった。

カカシ先生も去年から一緒。

そんなカカシ先生が気を利かしてくれたのか、なぜか私達三人は二年生になっても同じクラスだった。

正直言って彼を取り巻く大勢の女子の中で一番彼に気に入られてるとは思ってる。

あくまで友達の範囲内だけど。

でも、だからこそ。

彼に思いを伝えてしまって、この関係を崩すようなことはしたくない。

ナルトだって、私達の中で気まずくなるのはいやだろうし。

でも、遠くから見てるのは辛い。

最初はそれは一目惚れだった。

きっと彼には絶対に近づけないだろうって思ってた。

でも、ナルトのおかげで仲良くなれて。

今じゃ帰りに三人で一楽に寄り道するほど仲良くなれた。

そして、彼の性格を知って。

外見とは違って優しいところもあるって知って、余計好きになった。

これ以上、抑えきれる自信なんてないんだけど。

はあ、とため息をつくと立ち上がり、日誌を教卓の上に置いた。

下駄箱ではきっとナルトが待っている。

そこには、告白をされてきた彼も来る。

憂鬱だなあ…

そんなことを思いながら鞄を掴み教室を去ろうとした。

その時だった。

ガラッ

教室の扉が盛大に音を立てて開いた。

入り口に目をやると、そこには彼が静かに立っていた。

「サ…サスケくん…?」

サスケはスタスタとサクラに歩み寄った。

やば…今サスケくんの顔見たら泣くかも…

「ど、どうしたの?」

サスケから極力目を離して訪ねる。

サクラのそんな行動に訝しげに眉をひそめるサスケ。

「鞄、忘れた」

自分の席に進むと、横にひっかけてある鞄を机の上にドン、と置く。

「あ、じゃあ、先にナルトのところ言ってるね」

サクラは逃げるように教室を後にしようとした。

「サクラ」

「な…なに?」

振り向こうとすると、サスケは教室を突っ切りサクラの手を掴んだ。

「えっ!?」

「行くぞ」

強引にサクラの手を引っ張るサスケ。

「サ、サスケくん!?」

「なんだ」

「手………」

「嫌か?」

「い、嫌じゃないけどっ!」

「じゃあ何も言うな」

しばらく沈黙が続いた。

廊下に二人の足跡が響く。

「サスケくん…」

「?」

「今日、告白…されてたね」

「見てたのか」

ぴたり、とサスケは足を止めた。

それに連れてサクラも足を止める。

「あ、ご、ごめんね。別に見るつもりはなかったんだけど…目に入っちゃって」

サクラは咄嗟の嘘をつく。

「………」

「サスケくん、モテるもんね…」

「別に」

クルッとサスケは向きを変えると、サクラの目をじっと見た。

サクラは耐えられなくて目をそらす。

「…好きでもねえヤツに好きって言われても嬉しくなんかない」

『好きでもねえヤツ』

その言葉に、サスケに好きな人がいるんだと知った。

「そっ…か。そうだよね」

やばい。ほんとに泣きそう。

サクラはサスケの手からスルリと抜け、後ろを向いた。

「いいなあ。サスケくんに好きになって貰えて。
きっと、すごく良い子なのね」

「…サクラ」

「羨ましいなあ…」

「サクラ!」

サスケが声を張り、ビクッと肩を震わせる。

そして、静かに振り向いた。

その時。

唇に、何か柔らかいものが当たった。

それは一瞬の出来事で、サスケの顔が目の前から離れていく。

「な…んで…」

「………」

「好き…でもないのに…」

「…バカか。好きじゃないヤツに…キスなんかするか」

サスケの言葉にサクラは目を開いた。

「今…なん…て?」

「………行くぞ」

「あっ、ねえ、サスケくん!」

前を歩き出すサスケの後を急いで追った。

「今、なんて言ったの?」

「二度も言うかよ」

「だって聞こえなかったから」

「知るか」

「…顔、赤いよ?」

「…………」













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君は言った

(また、綴る)
(あなたの日常を)
(私の、シアワセを。)

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