*出陣〜小説〜*

□process
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遥か昔、いつかは花も色褪せ、散り行く運命なのだと誰かが呟いた言の葉は翻りながらも舞うように俺の世界へと滑り込み、いずれ根を張り、実をたわわに実らせた。
何と美しき光景であろう。
一瞬にして垣間見る命の儚きこそが他の者達をこうまで駆り立たせる。

だが…花を<華>と歌う時間というものは何と短い事だろう。
それを思うだけで怒りにも似た感情が俺の奥深くにまで刃を突き付けるのだ。
何故こんなにも儚い?
何故こんなにも脆い?
そして最後には必ず虚しさだけが取り零されたように居座っている。
まるで主を無くした城のように。


ふと…ある一輪の花を思い出した。
それはどういう訳かいつも群れの中に咲かず、それでいて群れのすぐ傍でしか蕾をつけようとはしない。
時には日陰のような場所でひっそりと開花し、寒いのかまたすぐに群れへと歩み寄るのだ。
だが奴は決して摘まれるような真似はしなかった。
何と気高い花だろう。
力ずくでも摘み取って枯れ行く様を嘲笑ってやる。
暴力的な思考がまかり間違っても口を突かぬようあの手この手で伸ばすも、その頑なな姿勢は決して崩れる事はなかった。
面白い。愉快だ。

「そう思わんか?」
「酷い人だ。」
「酷い事などあるか。」
「…それで?」
「ん?」

わざと惚けた返答を差し出してやれば頬をぷくりと膨らませ、つんと拗ねてしまう。その様がどんなに胸の内をむず痒く疼かせるかなど知る由もないのだろうが…。

「意地悪ですね。」
「何の事だ?」
「誰の話なのか…。」
「嫉妬するな。」
「違いますっ!」

ああ、なるほど。
永年の間ずっと抱いていた違和感が溶けて行く。
これが………。







愛情か。

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