*軍議〜替え歌〜*

□時忘人/KAITO“戦ムソ*宗清”
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華やいだ街の隅に先駆けた花は
赤紫に彩られた風に揺られ
流れゆく時代に抗えず塵に舞う
重なる記憶掠めた痛みに何を思う

天照らす朝、戦場へと発つ濃霧の荒野に香るは藤の聲
もはや迷いもなく結ばれた糸さえ地に投げ捨ててしまった
開く葵の夢

動いていた時が止まった
大地へと還った種は今
風が凪いだ
芽吹く素振りも見せずに泡沫に消え逝くよう
聴こえていた聲はもうない
見えない時に耐えず遮られ
転がっていた糸は絡まり俺はただ動けず此処にいる

陽が沈みすぼむ花が哀しげに揺れる
時に置き去られたまま夜を繰り返して

月詠む慕情、祈る幻想
巡る思想の果てに手招く黄泉(よみ)の鬼
もはや望みもなく絡まった糸は地に根を張り出してしまった
結ぶ敗(はい)の契り

戦ってきた記憶があった
背中預けてた仲間がいた
この街には俺だけがいる
あの見慣れた顔は今何処に

忘レテタ、探シテタ
トテモ大切ナ人ヲ
俺が此処にいる意味を
先駆けたその花を手折る風を待っている
唯一、抗い続けてきた事

千を過ごし万(よろず)を数え街は濁る風を生み出した
空に咲いた星の光も街頭に照らされ届かない

動いていた時が止まった
俺達は確かに此処にいた
風が凪いだ
ふいに香った
恋うは橘(たちばな)か、永遠(とわ)の願い
聴こえていた聲はもうない
此処がきっと俺の居場所だと誰一人気付く事なく
我が身手折る風を待っている

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