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思わずため息が出た。
「………教授、何してるんですか?」
軽く目眩と頭痛を覚え、組んでた腕を片腕だけこめかみに当てる。
彼は何やらスイッチの様な物を壁に取り付けている模様。
それが玄関先か裏口の壁に取り付けるならば話は解る、だが…彼が作業している所は研究室の前に取り付けているのだ。
「うん?ただ、スイッチを付けているだけだが?…まさか、そこで一時間も前に見ていても気がつかないのか?」
「それは、見ていればわかります…!私が言いたいのはこのスイッチが何の為に在るのか、また何の為にこんな物を設置するのかが言いたいのですよ!!」
「何となく…作った、実に下らないだろう?」
彼は満足そうに頷いている。
このクソ忙しい時期に悠長なその態度も加算されてシャルルがキレる。
「教授、何なんですか!?このスイッチの周りは!?何となく…などと言う理由で変な物を造らないで下さい!!後、造るならこんな変な所に造らないで下さい!!片付けるのは私なんですからね!!」
人差し指をソレに向け、怒涛の勢いで教授に近づき説教する。
シャルルのこめかみには、青筋がうっすらと浮き出ている。
教授はびっくりしているがシャルルが怒るのも、無理もない。
人差し指の先には、
『触るな危険!』
『押さないで下さい…』
『キケン!近寄るな!!』
など等の本能を揺さぶるような事が、わざわざスイッチに集中する様にでかでかと貼られている。
そして、スイッチの方はお決まりの真っ赤な色をしていて真中には黒いドクロマークが描いてあり、丁寧な事に黄色と黒のテープで囲われているからだ。
いかにも、押して下さいと言わんばかりのソレ。
アホらしくて、怪しいと言うものを通り越して…馬鹿馬鹿しい。
すると、彼は納得したように手を打ち白状する。
「うん、誰かが引っ掛かると思って付けてみた」
「…アホかーッ!!」
太陽の光が煌々として館に降り注ぐ中、シャルルの叫びは町中に響き渡った。