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亀の歩み
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生徒会で昼飯を食べていた時のこと。

ぐっと箸を持ったままの手を僕へつきだし、そうだ恋人らしいことをしよう!となどとアホがアホっぽくアホなことを言い出した。

「・・・とりあえず、顔についてる米粒をどうにかして下さい。」

「え、どこどこ?」

「耳たぶです。つーかどうやったらそんなとこにつくの?!一緒に食ってたのに全くわからないんですけど!」


ごしごしとジャージのそでで耳をこする太子。その取り方だと耳にこびりつくんじゃないかと思ったが口にするのが面倒だったので放置した。

「で、恋人らしいことをしたいんだけど、妹子どう思う?」

「うわまだ覚えてやがった・・・いつもなら何か別の動き挟むと忘れるのに・・・」

「なんだよ人を鶏みたいに!失礼な奴だな!」

「いえ太子、鶏だって三歩歩くまでは覚えてますよ」

「何・・・あ、お前まさか鶏以下って言いたいのか!」

「そうですけど」

適当にあしらっていると太子はぶすっと不満そうに頬を膨らませた。うわ気持ち悪!下手すりゃ二十代のくせに!

「なんだよー妹子は私と恋人らしいことしたくないのか?」

「・・・・・・・・・」

いや、それは。認めたくはないが、そういうわけでもなく。というかむしろなんだ、アレなんだけども。

「・・・恋人らしいって例えばどういうことを言ってんですか?」

太子は少し首をかしげて考える仕草をする。本当にこいついくつなんだろう。なんでそんな仕草様になってんだよ!

「手ぇつないだりとか」

「それはもうしてますよね」

あんた街中で手離すとすぐどっか行くから、しかたなく。言っておくが他意はない。本当にこの人、なにかに興味示すと他のこと何も考えずにそっち行こうとするから。

「一緒に登校するとか」

「あんたに早起きと学校まで歩く体力を期待してもいいんですか?」

あんたがいっつも閻魔さんと乗ってるリムジンに乗るのは死んでも嫌だからな。

「お互いの弁当作ってくるとか」

「・・・・・・遠慮しときます」

んなことさせたら翌日あんたの指が全部失くなってそうだ。頭はいいし運動もできるけど、手先だけは不器用なんだよな。驚異的に。

「・・・じゃあ・・・あれ、くちづ・・・キ、キスとか、は?」

間。
えっと・・・・・・。

「え。いやあの、それはその、まだ早いというか・・・そのうちに」

・・・どうせするならこう、雰囲気のある時にしたいし。ほら、景色の綺麗な所とか・・・やばい考えてて恥ずかしくなってきた。

「じゃあ、えっと・・・」

「太子、あの」

「ん?何だ」

「好きです」

ぶはびぼっという不気味なな呻き声と共に太子は机に突っ伏した。うわっ耳まで真っ赤だこのおっさん。どんだけ初心・・・いや僕も赤くなってるから人のこと言えないけど。僕はわざとらしい咳ばらいをする。あー恥ずかしい。僕ってこんな恥ずかしい奴だったのか。

「今はそれだけで勘弁してくれませんか。僕にも色々考えとか、ありますし」

「・・・なに、考えって」

「色々っつったでしょう」

つっこむんじゃねぇと睨み付ける。

「だいたい、そんな急ぐ必要なんかないでしょう。・・・時間なんかいっぱいあるし、そういうのは自然に進んでいくもんでしょうが」

「・・・・・・そうか」

へらりと、太子はおかしそうに笑った。まったくなんなのだろうこの人は・・・幸せそうに、笑いやがって。・・・可愛いじゃないか。

「そうですよ。わかったらとっとと飯食って下さい。仕事あるんですから」

「うん」

それからお互い何となく照れ臭くて無言のまま昼飯を掻っ込んだ。
・・・今日の放課後は、手の繋ぎ方でも変えてみるか。普通の繋ぎ方から、恋人繋ぎというやつに。
そんなことを、考えながら。







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