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いもこと!
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たいしがとてもきれいな花を髪にさしていた。

「たいしそれ、どうしたんですか?おっさんがそんなのさしても気持ちわるいだけですよ?」

ちょっとだけかわいいな、と思ったけどひみつだ。

「ひど男!私はまだオッサンじゃないわい!まったく先生に向かってなんて幼稚園児だ・・・」

「じじつを言っただけです。で、どうしたんですかそのお花」

「どこまでも辛辣な子だな妹子は・・・竹中さんにもらったんだよ。いいだろう!綺麗だろ!やんないぞ!」
たけなかくん。
その名前をきいたとき、なにかむねのあたりがもやもやした。

「いりませんよそんなもの」

きれいなお花を「そんなもの」なんて言ってしまったのも、そのせい。

おもしろくない。

ぼくはなんだかあと一秒でもそこにいたくなくて、たいしがとめるのもきかずにその場からはしりさってしまった。

いやなきぶん。なんかすっごくいやだ。たいしがたけなかくんからもらったお花をにこにこしながら髪にさしてることが、なぜかがまんできないくらいにいやだった。

「うわっ」

「っ?!」

なにか大きなものにぶつかってころんだ。
いたい。

「わわっ妹子くん!大丈夫?」

大きなものはとなりのほそみち組の芭蕉せんせいだった。

「ごめんなさい・・・だいじょうぶです」

「ううん、あやまんなくてもいいよ。・・・どうしたの、妹子くん」

「え?」

「なんか、泣きそうな顔してるよ」


そういわれると、たしかにぼくはとてもかなしい気持ちだったきがする。


「うっ・・・」

ふかくにも、ぼくはそのままないてしまった。

芭蕉せんせいは、オロオロしながらもやさしくぼくのせなかをさすってくれた。



「そっかぁ」


なきながらさっきあったこと、ぜんぶ芭蕉せんせいにはなしてしまった。

芭蕉せんせいはやさしくぼくにわらいかけてくれて、
「それはね、多分やきもちだよ」

とおしえてくれた。

・・・・・・・・・ん?やきもち?

「やきもち?!」

「うん」

「ちがいます!やきもちってだって、らぶらぶな男のひとと女のひとがしたりされたりする、あいのすぱいすのことでしょう?!」

「どこで覚えたのそんな偏りきった知識?!」

芭蕉せんせいはひとしきり「最近の子がわからない・・・!」とあたまをかかえたあと、ゴホンとせきばらいをひとつして、さとすように言った。

「えっとね、やきもちって言うのは、好きな人が別の人と仲良くしてて嫌だーって思うことなんだよ」

「そうなんですか!」

「妹子くんは、太子先生のこと好きでしょ?」

すき?

「ち、ちが・・・」

「妹子くん」

芭蕉せんせいはいたずらっこのようにわらった。

なんだかその笑顔にはぼくのぜんぶをしってるよ?っていわれたきがして。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、すきでなくも・・・ないです」

なんでかそんなことをいってしまった。

くすくすと芭蕉せんせいは笑う。
なんか胸がくすぐったい。
「だからね、太子先生が竹中くんにとられちゃうような気がして、悲しくなっちゃったんだよ」

「・・・はあ」

たいしのあのうれしそうなかおをおもいだす。
やっぱり胸がもやもやした。

「そうなのかも・・・しれません」

かなりみとめたくない気持ちだったけど、ぼくはおとななのでそこはグッとこらえてみとめてやった。
しかたない。しかたないんだ。

さて、どうしよう。

なんかたけなかさんにまけっぱなしもいやだし、もやもやはまだはれたわけじゃないし。

「芭蕉せんせい、ありがとうございました」


よし、きめた。


「え、うん。・・・これからどうするの?」

「・・・ちょっとお花とりにいってきます!せんせい、きれいなお花のさいてるとこ、わかりますか?」

「あー、裏庭とかかな?太子先生喜ぶといいね」

あったりまえです!ぼくがわざわざたいしのためにさがしにいくんですから。

「ぜったいよろこばせます!たけなかさんのよりもずーっときれいなお花、みつけてみせますから!」

じゃあ、と芭蕉せんせいにてをふって、ぼくはかけだした。

たいし、まっててください!






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