文2

グミちゃんが来たよ!
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「きれー・・・」

うっとりと七月七日の快晴の夜空を見上げるのは向日葵色の髪の小さな女の子。名前は確か、鏡音リンさん。その横顔はとても無邪気でほほえましいです。
つられて私も上を向いてみると、ばっと目にたくさんのお星様が飛び込んできました。

「わー・・・すごい!マスターさんも粋な人なんですね。こんなに綺麗な星たちを見せてくれるなんて」

私が話かけるとリンさんはそのとびっきりの笑顔をこちらに向けてくれました。心の底から嬉しそうで、マスターさんを褒められたからか少し誇らしげです。

「だよねっ!ぐーちゃんが来たから今年は大盤振る舞いだーって言ってたから何かと思ったけど、こんなの見せてくれるなんて思わなかったよ!」

リンさんが嬉しそうだと、なんだか辺りにぱっとお花が咲いたような気がします。

「あーもうリンさん、かわいいですー!」

思わずぎゅーっと抱きしめてしまいました。リンさんも嫌がる様子がなく、むしろ嬉しそうにすりついてきてくれました。気さくな先輩でよかったなーと思います。
正直言って、今日ここに来るまでは不安だったし緊張でやばい吐きそうですなんて言ってマスターさんを困らせたりしてしまいましたが…それはまったくの杞憂というものでした。

「ぐーちゃん、いい匂いする!」

「本当ですか?そう言っていただけると嬉しいです」

至近距離でにこにこと笑いあっているととてもあったかい気持ちになれます。

それに今日は天の川の立体映像の他にもバーベキューやケーキまで皆さんに用意していただけて、私はなんて幸せなんでしょう。

ああ、ここに来れてよかったと心から思えた夜でした。




***







新入りにして拙者の妹、ぐみはなんとか皆に溶け込めたようで先程から色々な方々と言葉を交わしている。

「リンさんリンさん、こっちのお肉焼けましたよ!リンさんの分もちゃんと確保したんですよーささ、どうぞっ」

「肉ーっ!!ぐーちゃんグッジョブ!あいしてるぅっ」

「・・・あんたら、早速仲良いわねぇ」



そう、特にリン殿とぐみは呆れる程に早く打ち解けていた。波長が合うというやつだろうか。何にせよ有り難い。
そういえば拙者がインストールされて此処へ来た日に1番に話しかけてきたのもリン殿だったことを思い出した。
そのとき感じた、インストールされたばかりの不安な心をふわりと包まれたような安心感。ああ、大丈夫だ。この人がいるならば。こんな笑顔がある場所なのならば、何も不安なことなどないと思わせてくれた。

離れた所で彼女と満面の笑顔で肉をほうばるグミを見つめる。おそらくあの時の拙者と同じ心持ちでいる、初めての妹を。

不思議だ。グミの笑顔を見ているととても懐が温くなる。それは今まで他の者に抱いたことのあるどの情とも異なるもの。なるほどこれが兄妹の情というやつなのだろうか。カイトの妹たちへの狂いぶりが少し理解できた気がした。

彼方の星を仰ぎ見、良き巡り会いへの感謝と、そしてこれからの生活への希望に思いを馳せる。きっとより幸せに溢れるであろう、これからに乾杯を。





***




リンのお家にまたひとり、家族が増えました!ほんとはリンのって言うか、がっくんの妹さんなんだけど・・・まああんまり変わんないよね。おんなじマスターのボーカロイドなんだし。

名前はグミちゃんって言うんだって。だからぐーちゃんって呼ぶことに決めたの。がっくんとぐーちゃん!って並べるとなんかかわいいしいいかなって。昨日一生懸命考えたんだ!


今はみんなで願い事を書いた短冊をつるしてるとこ。カイト兄とかがっくんとかレンががんばってる。

「カイトさんすごいですねっ!兄上を肩車して、さらにその上にレンさんがのっかってます・・・しかも兄上、帯刀してますっ?!」

「ほんとだすごーい!前あたし持ったことあるけどあれ、すんごい重かったよ!」

「・・・お姉ちゃん、お兄ちゃん足が生まれたての小鹿なのに顔は笑顔だよ?怖っ・・・」

「リンやグミちゃんにいいとこ見せたいんでしょどうせ。あんま見ちゃだめよ。バカが移るから・・・まあ頑張ってくれてんのは素直にありがたいんだけど」

「ああいけませんメイコ姉様!あんなのにそんな簡単にデレられては勿体ない!」


にぎやかなみんな。楽しい空気。こういうの好きだなぁって思う。わくわくするし、皆が楽しんでるのがわかるから嬉しいしで幸せが何倍にだってなっちゃうから。
それに、今日は新しい家族までできたしね!
隣で短冊がひとつひとつ笹にかけられていくのを夢中で見てるぐーちゃん。すっごい楽しい子。リンと一緒になってはしゃいでくれた。
今まで家族の中でリンと同じテンションで遊べる人はいなかったからなんか新鮮だったなぁ。これからこの子といっしょに暮らしていけるのがすっごく嬉しい。うおー!とかぐあー!とか、なんでもいいからとにかく叫びたくなる。

「ぐーちゃんぐーちゃん、明日さ、リンが家の近く案内したげるね!」

「ほんとですかっ!楽しみですー!リンさんが好きな場所とかいっぱい教えてくださいね」


ああもうどうしよ、大好きだなーってすっごい思う。
なんかさ、リンが力いっぱいボール投げたら、全力で打ち返してくれそうなんだよね、ぐーちゃんて。

「あ、あの黄色い短冊リンさんのですよね?」

「本当だっ・・・レーン!それてっぺんにつけてねー!!カイ兄がっくんがんばってー!」




「だとよカイ兄。てっぺんまでもうちょいだからちゃんと背筋伸ばせな」

「わかっ・・・た!が、が・・・がんばる!!」

「・・・カイト、平気か?顔が紫になっているぞ」

「大、丈夫でっす!リンー、めーちゃーん!僕頑張ってるよー!!」



そうしてがっくんやレンやカイ兄のおかげでリンの願事は1番お星さまに近い所につるされました!

てっぺんでひらひらと靡く黄色い短冊。


『今年も皆でたのしくすごせますよーに!』

絶対叶う。叶えられる。だからぐーちゃん、みんな、











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