文2

仲良きことは
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「お茶がおいしいねぇがっくん」

「そうでござるなー」

気持ちのいい晴れの日。日光のあたる縁側。適度に吹く涼風。隣には愛しいひと。

「幸せだねぇがっくん」

「まったくでござる」

「・・・どこの老夫婦だお前ら」

その空間にたまらなくなったのか、鋭い声のツッコミが飛んだ。声の主はふたりのいる縁側のついた六畳ほどの部屋の奥にぽつん座ってとひとり譜読みをしていたレンだ。

「なによーレンもこっちきてみなよ、気持ちいいよー?」

「そうでござる。穏やかな気分になれますぞー」

「いかねぇよ。ロリコンの近くなんかに行ったらうつるだろ」

レンは腹立ちまぎれに幼稚な嫌味をぶつける。しかしがくぽは穏やかに笑いさらりとそれを流した。


「なに、大丈夫だレン殿。拙者のリン殿を好いている気持ちはうつらぬ。うつられても困るでござる」



「・・・えへー。あたし、がっくんのそゆとこ好きだなぁ」

「リ、リン殿・・・照れるでござるよ」

ふたりは見つめあうと、リンは幸せそうに、がくぽは気恥ずかしげに微笑みを交わした。

「・・・お前ら、めちゃくちゃ恥ずかしいぞ。言っとくけど」

「ホントのことだもん。恥ずかしくなんかないよ。ねーがっくん」

「だーもうそれはいいから!」

また一々のたうちまわりたくなるようなやりとりを始められたらたまらないとレンは、どすどすと畳を音をたてて踏みしめながら縁側へ出た。

「つーかお前らいちゃつくのは勝手だけどな、今日は仕事でここ来てんだよ仕事で!わかってんのか?あ?!」

我慢の限界がきたらしいレンは精一杯どなり散らす。しかし怒鳴られたふたりはあくまでマイペースだ。

「わかってるわよぅ。だからほら、レンもここ座って。お仕事しましょう?ってさっきから言ってるじゃない」

「ああそうかよそうだったのかよ俺には一緒にのんびりお茶でも飲もうって誘いに聞こえたけどな!」

「それはレン殿が少々早とちりをしただけでござろう。ささ、こちらへ座りなさい。こういうのびのびした環境の方が音ものびるかもしれぬ」

ぽんぽんとがくぽはリンと自分の空いているスペースをたたく。

「こちらへって・・・お前らの間にか?冗談じゃねぇよ!」

「だーめ。ほらぁー仕事するんでしょ?早くしないと日がくれるよー」

「そうでござる。ささ、お茶もありますぞ。どうぞ、レン殿」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ああだめだこれはもうこいつらのペースだよ。レンは大きな大きなため息をひとつつくと、どかりと二人の間に腰を降ろした。

「俺は馬に蹴られて死にたかないんだけどな」

苦し紛れの一言。口にした途端、姉と侍はおかしそうに笑った。

「馬鹿ねレンは。レンが邪魔になるわけないでしょ?」

「ああ。レン殿ならいつでも大歓迎でござる」

どこまでも恥ずかしい二人の言葉。・・・もう何も言うまい。ツッコミ疲れたのだろうレンは諦めて仕事しよう、と思った。

「あーはいはいはい。じゃ、仕事すっぞ仕事。誰かさんたちがのんびりすぎっからとっとと始めねぇと日が暮れる!」

照れ隠しの悪態は効果を持たず、ただ場のなごやかすぎる空気を助長するだけだった。

まったくこいつらは。

・・・でも、まあ。
気持ちのいい晴れの日。日光のあたる縁側。適度に吹く涼風。隣には・・・うざいバカップルがいるけど。それでも。

なかなかにこういうのも悪くないかもしれないな、とレンは思ったのだった。





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