文1
□卑怯者と、
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ミクちゃんは多分、あたしのことが好きだ。
困ったことに、恋愛的な意味で。
何回か告られそうな雰囲気になったことだってある。
あたしはそのたびに必死でそれをかわしてきた。
「ね、リンちゃんあのっ」
やめてよ。ミクちゃん、あたしは
「あ、そういえばミクちゃん今日顔色悪くない?」
ミクちゃんのこと、大好きなのに。
「え、そかな」
「そーだよ!あったかくして寝ないと。あたしはもう部屋に戻るねっお大事にー!」
本当に簡単。強引に話を切り上げればいつだってミクちゃんは黙る。恐いよね。言ったらあたしたちの関係、壊れちゃうもんね。
あたしは、恐いよ。すごく。
友達としてのミクちゃんは優しくて可愛くて、一緒にいるとすごく楽しい。ずっとずっと、一緒にいれたらいいのにって思うくらいに。
ミクちゃんは気持ち伝えたらすっきりするかもね。でもそれで壊れるものの大きさに、あたしは堪えられない。
結局は、エゴイズム。
ねえミクちゃん、ずっと側にいてよ。
ずっと友達でいようよ。
あたし、本当にミクちゃんのこと大好きなんだよ?
よく『好きじゃないなら優しくしないで』なんて台詞聞くけどさ、優しくしたいよ。
だって大好きだから。
その気持ちが恋じゃないからってどうしてこんなに遠いの。
「あたし、ミクちゃんのためなら死ねるよ。大好きな友達だもん」
毒を吐くように愛の言葉を叫ぶ。
本心からの言葉だったのにそんな痛そうな顔しないでよ。
『私も、だよ』
やめて。ミクちゃんが悲しいとあたしも悲しい。
なんであたしはこんなにミクちゃんが好きなんだろう。いっそ突き放せたらどんなに楽か知れないのに。
なんで。
なんであたしはミクちゃんのためなら何だって出来そうなのに、恋人にだけはなれないんだろう。
ごめんね。
貴女を好きになれなくて、本当にごめんなさい。
ミクちゃんが悲しいとあたしも悲しい。
ミクちゃんがつらいとあたしもつらい。
でも。
だけど離れることも受け入れることも、あたしにはできない。
ごまかしてかわして貴女を悲しませることしかできないのに離れてほしくなくて立ち回る、あたしは卑怯者。
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