文1

光舞う坂道で
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―――この学校は、好きですか?

私は、大好きです。
でも。
なにもかも、変わらずにはいられないです。嬉しいことも、楽しいことも全部。

それでもあなたは、この学校が好きでいられますか。


「――変わるのが嫌なら、変わらないようにする努力をすればいいだろう」


「・・・・・・え?」

俯いていた少女の発した誰に問いかけたわけでもない問いに、突然答えた声があった。
驚いた少女が顔を上げると、声の主と視線が交差した。
そこに立っていたのは、長い綺麗な髪を靡かせた背の高いの少女だった。

「少なくとも、私ならそうするな」

背の高い少女は言った。静かな強い瞳を真っ直ぐに俯いていた少女に向けて、問いかけた。

「・・・はあ。でも・・・そんなこと、できるものなんでしょうか」

「やってみなくちゃわからないだろう。大好きなら、諦めないでまずやってみたいと思わないか?」

「・・・・・・・・・。あなたは、強いんですね。うらやましいです」

「強い?・・・多分、違う。で、どうするんだ」

「・・・え」

「諦めるのか、諦めないのか」

「・・・・・・・・・・・・あきらめ、たくないです・・・」

俯いていた少女の眼に、そのときはじめて強さが見えた。
背の高い少女はそれを見て満足そうに頷く。

「そうか。なら頑張れ」

「・・・・・・・・・あんぱんっ」

「は?」

「・・・あのっ坂の上まで、一緒に言ってもいいですか?」

「あ、ああ。かまわないが」

「ありがとうございます!」

「・・・じゃあ、いこうか。ああ、私は坂上智代だ。お前の名前は?」

「私は、古河渚です」

「そうか。よろしくな」

智代は渚に優しく微笑んだ。

「はい!よろしくお願いします」

渚もそれに応えるように照れくさそうに笑う。



そうして、ふたりは昇り始めた。


長い、長い、坂道を。






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