文1

君の名前
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二人でただ、なにをするでもなく芝生の上に座って空を見ていたときのことだった。突然チビっ子が滅多にしないような神妙な顔で言ってきたのだ。

「しぐまさぁ」

「ん?」

「ほんとの名前、静馬の夕歩ってんだよね」

「あ、正しく知ってたんだ」

「・・・昨日あやなに聞きました」

「・・・そっか。それで?」

「呼んでみても、いいかなあ」


「え?別にいいけど・・・なんで突然」

「・・・あやながさ、なんか、恋人同士なのに名前呼んだことないのってなんかアレじゃないかーみたいなことを言っててさ」

「あー・・・まあ、チビっ子が私の名前も正確に知らなかったのは・・・アレかも」

「・・・ごめんなさい」

「ん、まあいいよ」

「ありがと・・・で、でさでさっあたしもしぐまの名前呼ぶんだからさっ」

「うん?」

「・・・しぐまにも、あたしの名前呼んでほしいんだ」

「はやて」

「うわっ!うわーちょっしぐまいきなりすぎるよ!」

「え?だってチビっ子が呼べって言ったんじゃん」

「心のじゅんびがいるんだよっ!あーなんかはじかしー!」

「・・・そんなもの?」

「だよ!」

「そうかな・・・じゃ、チビっ子呼んでみて」

「え?!う、うん・・・いくよ」

「うん」

「・・・・・・ゆ、夕歩」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「しぐま顔真っ赤だー」

「う、うるさいな。チビっ子だって赤いよ」

「え?うそ!」

「うそじゃない」

「・・・は、恥ずかしいもんだね」

「・・・だね」


それからまた、二人でぼんやりと空を見ることにした。
恥ずかしくて、なんだか私たちはお互いをまともに見れなかったから。
それともうひとつ、私はどうしても緩んでしまう口元を見られるのが照れ臭かったから。

たまにはこんな雰囲気も悪くない、かな。









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