文1

幸せの相乗効果
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あたしのお姫様は、ぽやぽやしてるちょっと天然気味な女の子。
青いお兄さんや赤いお姉さんに大切に育てられたからか世間の常識に疎くて恋愛事にも奥手な緑のツインテールが特徴のミクちゃんは、それはもうかわいらしい。

「ミクちゃんはかわいいねぇ」

一言そう口にすればその柔らかそうな白い肌に朱が散る。

「そんなことないったら!もうリンちゃんはそんなことばっかり言う」

「だって本当に可愛いから。あたしにこう言われるのは嫌?」

「い、嫌ってわけじゃないよ!」

少し悲しそうに聞くと慌てたように否定。すかさずじゃあ、と言葉を重ねる。

「じゃあ嬉しい?」

ミクちゃんの困ったような顔。あたしが可愛いとか好きだよ、とか言うときにいつもミクちゃんはそんな顔をする。
でも嫌がってるわけでも嬉しくないわけでもないこともその顔にはにじんでいるから喜んでることなんて丸わかり。

「・・・・・・う、嬉しくないわけ、ないよ」

あーもう!
こういう素直な所がミクちゃんの最大の魅力だと思う。

「ミクちゃんは可愛いなあ!大好きだよ」

心からの言葉は自然と口から溢れてくるもの。だから我慢なんてあたしはしない。

「リンちゃん・・・恥ずかしいよ」

「いいじゃん。だってミクちゃん、嬉しいんでしょ?」

「・・・・・・大好きなひとに可愛いって言われて嬉しくない人、いないと思う」

俯きがちにそんなことを言う。
抱きしめてぇと切実に思ったのであたしはその細い身体をぎゅーっと抱きしめた。

「ミクちゃんが嬉しいとあたしも嬉しいよ。だから『可愛い』も『大好き』ももっともっと言いたいな」

「・・・私が嬉しいとリンちゃんも嬉しい・・・」

じぃっとミクちゃんがあたしを見下ろす。くっついてるので結構な至近距離でどきっとした。


てゆか、あれ?なんか距離がどんどん近くなって、ミクちゃんストップストップちょ、近・・・

「ミ、ミクちゃ」

眉間に触れたなんともやわらかい感触に不覚にも動揺した。

そんなあたしをよそにミクちゃんは顔を離して一言。

「リンちゃん、嬉しい?」

「え、そりゃ嬉しいか嬉しくないかと聞かれれば嬉しい、けど・・・」

あたしの答えにミクちゃんは悪戯っぽい笑顔を浮かべた。

「なら、私も嬉しい。リンちゃんの言ったこと本当だね」

ちゅーできた嬉しさと合わさって二倍嬉しい、なんて言ってのけたミクちゃんは、なんというか可愛くてちょっとおねーさんぽくて心臓がさらに高鳴りました。

前言撤回。

あたしのお姫様は、ぽやぽやしてるちょっと天然気味な、でも時々油断ならない強か者な女の子。
まったくメイコ姉やらカイト兄に大事に大事に育てられたたずなのに、どこでこんなこと覚えてきたんだか。

「降参。まいったよお姫様」

「えっへへー。リンちゃんに勝った」

にこにこと笑う嬉しそうな笑顔を見つめる。

まあ、今日くらいいいか。



・・・これがクセになったのか、それ以来ミクちゃんが度々あたしの不意を打つようになるのは、また別のお話。









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