文1
□すきなもの
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綺麗な桃色を指に絡ませる。
すっと指の間を通り抜けるさらさらとした感触が心地良くて、ああ好きだなぁなんてわかりきっている事実が頭を支配する。
「・・・楽しいですか?」
隣で読書中だった髪の主が不思議そうにこちらを見た。
少し退屈そうな声。でもその内に嬉しそうな響きが含まれているのがわかったから髪をすく手は止めないことにした。
「意外と。あんたの髪、好きだし」
ぱっと真っ白な肌が桃色に染まる。髪とお揃いだ。
ももいろ。
最近のあたしの好きな色。
たぶん、あんたの色だから。
「メイコさんって、」
ルカは体ごとこちらを向かせてあたしをまじまじと見つめた。少しジト目気味な気がするけど、どうしたんだろう。
ぎしりと二人が座るベッドが鳴る。
「何よ」
「・・・わ、私のこと、本当に大好きですよねー・・・」
おどけた声を出そうとしたけどおどけきれませんでしたーという感じの、照れが見え隠れする口調。
「ん?」
何今更当たり前のことを、と言おうとして、あぁとふに落ちる。
ルカがこういうことを言うのはすなわち、ラブラブしようぜ!と言うこと。
前指摘したら『メイコさんその言い方は親父臭いです』とか言われてしまったけど。
本当はもっとかっこよく言いたいらしいけど、あたしは今の恥じらいを隠しきれてない言い方の方が好きだな。
「うん。大好き」
じゃあ遠慮なく、とあたしはルカを抱き寄せた。
ふわりと桃の香が広がる。
「いー匂い」
ぐりぐりとあごを頭に擦るように動かす。髪がさらさらして気持ちいい。
「そうですか?メイコさん、桃の匂い好きだったんですね」
覚えておきます、と嬉しそうに言うルカが愛おしい。
「んー、桃っつーかあんたが好き」
思ったことを素直に口に出すと黙ってしまった。
「ルカって照れると黙るわよね」
「・・・そこはわかってても言わないで下さいよ」
ルカは悔しそうに唸った。
「あはは」
普段余裕な態度を崩さないこの子のこういう所を見れる、というのは嬉しくて誇らしいことだ。
んー、さて。
あたしは窓を見る。
差し込むやさしい陽射しが気持ちいい。
こういう時にすることは、一つしかない。
「決めた。今日は昼寝しよう」
「えー」
「ルカと一緒にどうしても昼寝がしたい」
「・・・しかたないですね」
お許しが出た。
あたしはルカを抱きしめたままベッドに横たわる。
ルカの色。ルカの匂い。ルカの腕。全部に包まれて寝れるってこれ、すごく贅沢なことよね。
「しあわせー」
あたしはそっと目を閉じた。
ルカもおんなじように、幸せを感じてくれてたらいいな。
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