短編

□滴る朱
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鬱蒼とした森の中、実習を済ませた雷蔵は学園への帰路を歩く
すると道の先の木の幹に深く腰掛ける見知らぬ男



「そっちも終わったか」

「あぁ、無事にね。」


返事をすれば見知らぬ男はばさりと衣を翻し、顔を剥がせばそこには雷蔵と瓜二つの顔が現れた


課題である奪いとった密書をひらひらさせてお互いに任務達成を報告する


「無事にってわりにはやたらとボロボロじゃないか?」

「ちょっと転んだくらいだよ」


思わず苦笑して返すと三郎の目つきが変わった
雷蔵の顔の一点を見つめて黙ってしまったのを不思議に思い、首を傾げる


「僕の顔になんかついてる?」

「いや、口元に傷が」

「傷?」


そんなものいつの間に…確認するようにぐいっと口元をこすると、かさぶたが剥がれたのかピリッと痛みが走り袖には朱いしみが小さく滲んだ


あぁ、やってしまった
軽く後悔をしてふと顔を上げると三郎が尚も食い入るように見つめている

その視線に訝しみを感じて、注意を促すために口を開けば傷口からたらりと血が零れた



瞬時、べろりと傷口を舐められる

ぞくりと背筋が粟立ちヒッと小さく喉を鳴らした


一瞬何が起きたのか、自分に何をされたのか分からない
あまりに唐突な行動にカッと頬だけは赤く染まり理解が追いつかない



ただ、当の三郎は何食わぬ顔で舌なめずりをするとふむ、と頷いてみせる

「雷蔵はこういう味なのか。」


その余裕の表情に無性に腹が立ち、直後拳が上がったのは言うまでもない







「三郎が実習で負傷してくるなんて珍しいな」

「愛情の裏返しってやつだ。羨ましかろう?」

「いや、全然。」










*1128hitリク風明流様へ!
ただの変態鉢屋でごねんなさい…こんなんでよろしければもらってやって下さいませ!
リクエストありがとうございました!


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