another story

□〜プラネタリウム〜
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 搬送先の病院の自動ドアを抜けると、消毒液の匂いと薄い黄色の空気が僕の体にまとわりつく。昔、祖母が危篤状態になり、急いで病院に駆けつけた時と同じ感覚だ。僕は嫌な予感を振り払おうと、じっとしていることが出来ない。相沢は手当たり次第に電話をかけて誰かに詳しく聞こうとしている。着いたは良いものの、結子と悟志がどんな容態なのか、どの病棟に入院しているのか分からなかったのだ。
 再び自動ドアが開き、財布とコンビニ袋を手に持った女性が入ってきた。結子の母親だった。僕は急いで駆け寄る。
「ご無沙汰してます。谷本です。結子さんの容態はどうですか?」
「慎太郎君?」
 以前にコンビニで見かけた時とは違い、疲労の表情だ。おそらく昨夜は眠れなかったのだろう。
「何か大変なことになっちゃってね。結子は足の骨折と首のねんざで命に別状はないんだけど、彼がね…。」
 結子の安否にホッとしたのも、つかの間、言葉の最後の方は力も無く、事の重大さを物語っている。
「悟志は、そんなにヤバいんですか?」
「私も詳しいことは分からんけど、昨日からずっとICU(集中治療室)に入っとってね。結子は一般病棟に移ったけど、今は誰にも会いたくないって言っとるけん、ごめんね。」
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